塩ひとつまみ  伊波虎英


ささやかな楽しみなれり夕刊に宇江佐真理の遺作を読むは


海原に塩ひとつまみ振るごとくわが詠むうたは雪より淡し


八日遅くわれより生れし清原和博(きよはら)のスターとなりて覚醒剤(シャブ)で捕まる


清原にありてわれには無き刺青、痴呆の母と息子、元妻


「喜」と「楽」の感情のなき猿なれば笑はざるまま終へる一生


にんげんは所詮にんげん狂ひても猿にはなれず独り笑ひす


喜びも楽しみもなき日々なれど人間なれば笑つて過ごさむ