2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

◆短歌人賞受賞作(3作品) *一連30首より 「生まれておいで」猪幸絵 喝采かブーイングかもきめかねて土砂降りのなか無言で歩く 三月尽捨てたいものは捨ててゆく理由なくおまえは生まれておいで 予報では今年も暑くなるらしいほかのニュースを薄めるくらい …

だいこんが葱がだんだん甘くなる布団に毛布挟みし日より 渡英子 自転車の荷台に載りて過ぐる箱特上十尾と言ふ字の赤し 梶倶認 D51の上から手を振る子にわれも手を振り返す さよならさよなら 鶴田伊津 いとやさしう声掛けてくる僧侶ゐて子供のやうに頷きてを…

天理教の塀に大根干されてた宗教も人間のためというように 森谷彰 てのひらの金継ぎありし伊万里猪口 継がれし事に心傾く 楠田よはんな 若草の妻夫木聡の名に凭りて忘れ続ける一人の名まえ 古本史子 雑木林抜け来たるときわが踏みし枯葉の音は空に帰りぬ 守…

霜月のあしたに思ふはかなごと打ち消すごとく集塵車くる 渋谷知子 あふられて楓葉あまた落下せり一斉送信されたるやうに 洲淵智子 コスモスが咲いているから眼をとめる 親のない子を哀れむように 竹田正史 野の花の種子よりちさき脳(なづき)もち稚魚らは淡…

どうしたことか声がこんなに震えてるああわたくしは怒っているのだ 山本照子 オルガンの蓋をあければ雨降りの路地の匂いがふいに広がる 中井守恵 「あざみ」の子は「あさつき」母は「やまつつじ」 母系をたどるサルの名前は 野上佳図子 ぴらぴらと動くてのひ…

秋の日の言葉はさびし出づるうた出づるうたみな過ぎゆきのこと 仏壇の林檎ほのかに香る真夜、矢じりのごとく鼻梁尖りき きんもくせい甘く香れば思ほゆる学習雑誌の綴込み付録 蜜柑の絵、爪でこすれば匂ひ来し甘き人為の香をいまも恋ふ ワタクシハ存在セヌと…