2017-01-01から1年間の記事一覧

◆継続は力なれ 伊波虎英 「短歌人」の誌面にはじめて自分の歌が掲載されたのが二〇〇四 年の一月号。それから十四年、筆名を変更したり(二〇〇四年六月 号から)、表記を旧仮名遣いに改めたり(二〇〇五年二月号から) ということもありながら、一度も欠詠…

白飯と納豆 伊波虎英 CMの30秒にうるうるとなるのは秋の所為にしておく 標準語の語りに違和感おぼえつつ「わろてんか」見る十月二日 公明党か共産党しか選択肢なき選挙区に住みて秋暮る 二枚とも〈希望〉と書くか〈絶望〉と書くか迷ひてこねる納豆 白飯の…

ハンドスピナー 伊波虎英 五十歳最初の顔を撮られたり免許更新の流れ作業に くるくるとハンドスピナー回されて流行りとなるはなんだかわかる ハンドスピナーくるくる回す快感を宇宙創りし神ももちたり 一位らしい戦ひをする広島に二位らしく戦ひ阪神負ける …

うなぎと風鈴 伊波虎英 「う」の付くもの食べたかどうか考へるうなぎを食はず土用丑の日 背後から不意に切られし無念さを旨い旨いと食ふ関東人 真つ向から切られて果てしふんぎりの良さを旨いと食ふ関西人 真つ向から切られてみたいどつちみち食はれるならば…

答へず 伊波虎英 「何歳まで生きれるんやろ」つぶやきと解釈をして答へず母に 方舟のごとくコンテナはろばろと火蟻を乗せて海原を来る 流離譚つむがれてゆく劣情の烈火のごとき女王蟻らの 大地震の前兆なるか鯰面(なまづづら)の女性議員ががなりて暴る バ…

アンチ巨人 伊波虎英 頑張つて頑張つてつひに休場せし稀勢の里、だから応援をする 「読売はとらへん。アンチ巨人やから(といふのは些細な理由)」 こんなにも勝てぬ巨人の哀れなり愉快このうへなきことなれど ジャイアンツ13連敗 戸惑ひはアンチ巨人のわれ…

ひよつこ 伊波虎英 中卒で働く少女におのが身を重ねる母と「ひよつこ」を見る 四時起床、五時から八時まで労働、朝食のあと再び労働 女子寮の夜は楽しもいつぺんに虫歯になつたと母は笑へり 「ひまはり」は前川清の歌声がよしとおもひて聴く「桜坂」 萎むの…

○ 伊波虎英 やかましき音をたてつつシェーバーはわが顔面を蹂躙したり 線香の灰のやうなる白きもの電気シェーバーに溜まるは哀し さういへば母が掃除をしてをりし父のシェーバーにも同じもの 死ぬときのための笑顔を準備せぬ少女ほほゑむ遺影の中に まだつぼ…

アスクルハズノ 伊波虎英 もの言はぬ生き物たちの目のごとくくらき宇宙にうかぶ惑星 過ぎてゆく惰性のままの日常に村上春樹の新作を買ふ ページ繰るわが指先は光年の距離ひきよせる快に満たさる 暴君の焚書のごとし巨大物流倉庫(アスクル)は十三日間燃えつ…

◆『舟はゆりかご』 小黒世茂歌集 「玲瓏」編集委員の著者による第五歌集。二〇一二年後半から二〇 一六年前半の作品三〇八首を収める。 炎(ひ)ふく音と炭切る音の聴こえくる鍛冶場のそとより頭下げたり 海神へつづく鳥居をぬけるとき異国の声ごゑ寄せては返…

のどの仏へ 伊波虎英 湯たんぽがゆたんぽたんと騒ぎだすドナルド・トランプ就任の朝 ドーピングあからさまなるまま目指す金メダルのごときアメリカ・ファースト 乳牛(ちちうし)の吐く息しろき冬の朝つめたきままに牛乳を飲む 夏よりも滋養のおほき牛乳をの…

◆『花西行』 桑原正紀歌集 二〇一〇年春から二〇一四年春の作品四四四首を収めた第八歌集。 タイトルは、歌集の最後に置かれた一連「花西行」のなかの教師を定 年退職した直後の著者の感慨が込められた次の歌から採られている。 寝袋を背負ひて桜追ひ行かな…

盟神探湯の湯 伊波虎英 ピザを届けるサンタクロースとすれちがふ家路をいそぐ独り法師(ぼつち)よ 滅多には飲まぬコーヒー、こめかみの酷く疼けばブラックで飲む 水道水の甘味を舌は感じたりブラックコーヒー飲み干してのち SMAPの解散よりも気がかりは…

◆『うたがたり』 小谷博泰歌集 「白珠」「鱧と水仙」に所属する一九四四年生まれの著者による第 九歌集。四二六首を収め、未発表作品が多いという。二〇一五年六月 から二〇一六年五月までの一年間に詠まれた歌というから精力的に作 歌活動をされている方の…

二日目のカレー 伊波虎英 黒き雪、十一月の東京にふり積むといふデマを信じる とりどりの茸たつぷり入りたるカレーかすかに土の香りす 週五日通ふであらう朴槿恵(パククネ)が大衆食堂のおばちやんならば 老い人がハンドル握る自動車が突つ込むブレイクショ…

◆『梅雨空の沙羅』 宮本君子歌集 コスモス短歌会に所属する一九四七年生まれの著者による第二歌集。 二〇〇〇年秋から二〇一六年春までの作品四三七首を収める。 愛想のよき中年の奥にある哀しさに似て梅雨空の沙羅 タイトル『梅雨空の沙羅』は、歌集を読み…

駝鳥の涙 伊波虎英 ハロウィンに馬鹿騒ぎするニッポンの心のゆとりがややうらやまし BGMで不安を煽り本日の悲惨なニュースを届けるテレビ 甘いといふ駝鳥の涙おもふとき人間の世の哀しみ増せり 花なんて咲かせたくない種のまま眠つてゐたいそんな寒さだ …