2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

【扇マーク】 電柱の傾ぎて立てるホスピスの脇より街は暮れてゆくなり 伊波虎英

警官を弾は貫くわけもわからずにわれらは生き残るのみ 八木博信 何になる、こんな時代にキルケゴール読んで蹴飛ばす石もなくゆく 宮田長洋 砲弾のごとき鞄を抱きしめて急ぐ男を雨が包みぬ 倉益敬 上るとき一歩に一歩下るとき一歩一歩と戻れば夕暮 長谷川富市…

荒梅雨や街は汚れてゆくばかり新聞記事にならぬ事件で 村田馨 うぐひすの谷わたり澄む五月尽 午睡の母の補聴器を拭く 紺野裕子 春の海を乱して漢(をとこ)が釣りあげしこれやこの魚(うを)さくら色して 池田弓子 親指の爪で切れ味確かめて通学路刈る鎌を研…

吾が家の前の電柱 電線が無くてもやはり電柱である。 森直幹 「お月さん美しいで」とレジを打つわれに教えてくれる客あり 前田靖子 困りごとあらばいへよと言ふ人のをらぬ団地に十年(ととせ)住みをり 正藤義文 小さき島にひらかれし秘仏観音の時間(とき)…

オバアサン。幼時の記憶の青空のその先に行くな戦争してる 天瀬夕梨絵 ダンディな団塊世代が語りゐる燃えつきたジョーを置き去りのまま 田中愛 他所の花ひそかに愛でるたこ入道よこよこたてよこまる描いてちよん 田村よしてる 花を食ふコガネムシ千窓を這ふ…

◆「十年剥がれる」天野慶 制服が剥がれたのちの十年は鮮明な夢(であるという夢) おっぱいをさぐる子供に起こされる(いつでも今がいちばんいいや) ◆「玻璃刑」安斎未紀 電線にしがみつきたる白き鳩風強き朝の生は揺れをり くちなはのゆるくほどけて陽溜り…

「水の上で歌ふ」武下奈々子 真夜中のフェリーの揺れに見たる夢醒めざるままの歳月眩し 川波が微塵に砕く夕茜あすは異なる水と思へど 苦しみて産みし記憶もさやさやとこよひ螢の河に身を置く 「濃淡」渡英子 木の椅子にながく座りて目瞑れど死者のこゑなど遂…

風羅坊 伊波虎英 軒先に狐火のごと有平棒(アルヘイばう)まはす理髪屋らしからぬ家(うち) うるはしき声とよもして碧空に落ち穴をほる迦陵頻見ゆ 乳呑み児を に放るごと郵便ポストに歌稿を投ず 少年の九竅(きうけう)ゆ出でし風羅坊(ふうらばう)やぶれ…