2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

とことはに満つることなき眉月か神呪町(かんのうちやう)をさまよふ牧師 折鶴に息を吹き込むくちびるのかたちを神はもちてゐたるか 唱へたり「加牟波理入道郭公(がむばりにふだうほととぎす)」おほつごもりの夜の厠に 『クオ・ヴァディス』旅行鞄の隅にあ…

「海軍カレー」食べながら飲む一ぱいの牛乳は海の霧のつめたさ 金沢早苗 ダイソーの奥の通路に十個ずつサンタクロースは括られている 今井千草 甘苦いのど飴ひとつまろばせて懊悩ふかき表情をする 大橋弘志 裏町の造酒屋の白壁にジグソーパズルのごときひび…

お前はいつもしづかなアルトかあさんと呼びなづむときお前はいつも 紺野裕子 日本語を縦に書くとき少女らのためらふ気配 中間考査 有沢螢 まばたきをして外燈の消えしのちうつすらと空のまぶたは開く 下村由美子 いつとなく秋の氷雨(ひさめ)となりており忍…

電子辞書の翅をたためばひいやりと蝶のむねはら単四ふたつ 梅田由紀子 邪魔者は消せ的発想プーチンもブッシュもカタヤマ部長も同じ 藤田初枝 キンピラに一割まじる人参の味をたのしむわが愛国心 みの虫 もの言ひて次の展開待ちゐるにすかんぽのごとき言葉返…

遠ざかる猫の背中と立ち尽くす犬の胸との間(あひ)の木枯らし 田村よしてる 霜月のしもつゆみはりわが矢をば師走に向けて放たむとする 郄橋とみ子 焦点をあわさず話しかけること習いとなりぬ閉じたる家に 弘井文子 湯舟より日本海を眺めいつミサイルテポド…