2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

まんなかに生れたる栗のひとつぶはおのずから身をひらたくしたり 室井忠雄 銀漢をうつすら纏ふビアガーデン浮遊してゆく椅子のありなむ 渡英子 四分の一の西瓜購ひ食(たう)べをりいかなる人らと分け合ふかしらず 蒔田さくら子 産地直送とあれど産地はいづ…

福田首相辞任会見に休止となる『嫌われ松子の一生』の哀れ 秋山夕子 リノリウムの廊下を過ぎるスリッパの足音も間延びする昼下がり 平林文枝 天変と思へるほどの音たてて雷(らい)はおのれの光にほろぶ 岡田幸 喜多方の<切腹美少年>の菓子店主飯豊の山に…

局地的豪雨北上しておりぬ最近の若い雨は、と思う 津和歌子 ちいさな事につまづくわれは弱き者強さ欲しくて見るエド・はるみ 阿部美佳 己が身は先に滅ばん堂々たる十年保証の単三電池 生野檀 革命を信じて割れているざくろ残酷なほど赤く溢れて 森直幹 草原…

重なれば重なりしほど偶然は花壇の薔薇の匂うがごとし 多昭彦 入門の乙女らの膝やはらかに盛りあがりゐて茶室華やぐ 津布久愔子 かたつむり眉間をなぞってゆくようなこころぼそさを共有したい 中井守恵 ふと消えてしまひはせぬか盆祭の三日三晩を踊り明かせば…

「潰したら重たなるんや缶缶(カンカン)は」錬金術師めくホームレス 死に絶えて街ぢゆうに監視カメラは増えゆくばかり エリザベスカラーを嵌めた皮膚病の犬がゴッホのひまはりに見ゆ 「猿の手」を原書で読みて四十歳(しじふ)から四十一歳(しじふいち)へ…