2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Tシャツで殿下を迎へる瞬間がわが人生に用意されてた 菅野友紀 手動式鉛筆削りの存在が尊く見ゆるあほらし節電 斎藤典子 電力が足りなくなると言ううちに日本が多分なくなるだろう 若尾美智子 生き残る遊びせよとやうつせみの身に覚えなきこの罰げーむ 武藤…

紺深き今日の朝顔六つあり真先に見しは私であれ 林悠子 ジュンク堂池袋店に「塔」ありて「短歌人」より熱心に読む 山寺修象 逃げ水が舗道まなかに輝いて、あれはクリスチャンセンの足跡 生沼義朗 ただひとり生き残りゐる者のごと午前四時半のかなかなを聞く …

自販機のひかりのなかにうつくしく煙草がならぶこのうえもなく 内山晶太 シャッターの目立つ駅前商店街 虚ろな眼をした鯛焼き並ぶ 森直幹 それぞれの抱ける闇にともされし線香花火の火の玉見つむ 下村由美子 語りては元にもどりて繰り返すオルゴールに似る母…

「暑うて暑うて死んでしまう」と言う夫よ死ぬるもんなら死んでみせてよ 山本照子 もぎ立てのトマトとともに手の平に太陽の熱じわりとつかむ 中島敦子 春川ますみの乳房のやうに縦に揺れ巨きあぢさゐ颱風告げる 黒田英雄 絶筆となりし歌まで二頁となりて表紙…

ついわらうテレビの中の空回り君も君もただ一生懸命 古賀大介 シャボン玉飛んで来たるにだれもいず夕陽の中を歩みいるとき 鳥山繁之 あさなさな廊下に母のゆまり跡さみしきもののごとくに残りぬ たしろゆう 左眼の下にほくろがあることをはじめて知りぬ遺影…

人の訃を知らされている留守電にこんなさびしきことがあろうか 高野裕子 口笛を吹きて仲間を集めむかリヴァー・フェニックスはもうゐないけど 大越泉 雲はもう形を変へた妹が母に優しくしてゐるだらう 大越泉 (2012.1.20.記)

蝸牛鳴く 伊波虎英 お好み焼き(おこのみ)のソースの香りかぎながら踏切の棒あがるのを待つ かたつむり張り付くごとしビル壁にあまたあまたの室外機鳴く 鉄板の上でソースがはねるごと「暑い、暑い」と言へり誰しも 夕焼けがお好み焼き(おこのみ)ソースの…