2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

炭と化す「ツツミサトコ」さんのお弁当幾百年も語りつづけよ 寺島弘子 バッターを打ちとる投手の快感は三振とるよりもつまらせるにあり 室井忠雄 単純に本音といふをすぐに吐くみなもと涼しき泉ならねば 三井ゆき 逃亡したし逃亡したしとおもふ日の都電はま…

雨音に立ち止まるとき紫陽花の中は明るき夜と思いぬ 守谷茂泰 雨の夜のくらき三和土にスニーカーの踵光れり螢棲むごと 宮本田鶴子 ヤーヴェーの父性疎めるわたくしに仔猫晒せり小さきふぐり 森澤真理 雲ひとつなき青空に吸ひ込まれ洗はれてより戻りし眼 田中…

パンのみに生くるは清(すが)しまつすぐに真鯉のむれが口あけて来る 菅八重子 嗚呼俺もおまへもまことろくでなし博打の他に救ひなどなし 内藤健治 父死にきたった一人で 生きている者全員に置き去りにされ 生野檀 つれづれに万国国旗眺むれば赤色無き旗実に…

「だるまさんがころんだ」ふっとふり向けばみな野仏に いつまでも鬼 後藤祐子 ごみ回収日の朝だけに会うひとたちが気圧の谷を呼びよせている 今井ゆきこ 気がつけば鳥類図鑑かなしかりここに載(の)るもの皆翔(と)び去れり 田平子 あいさつを終えてはらり…

梅雨明けのまぢかき午(ひる)に<ごく自然なる愛はむづかし>の歌くちを出づ 糞をする犬をつつめる陽のやうなごく自然なる愛はむづかし 小島ゆかり 金平糖ばりばり砕く織田信長(のぶなが)の奥歯のやうに白き夏雲 Baedeker(ベデカー)の表紙のごとき夕映…