2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

不登校生にも届く卒業の証、赤紙、千人針は 伊波虎英

海空の交接点に救済のありや、埠頭に多くが見ており 生沼義朗 春がすみへだてておぼろ海柘榴市に平群鮪(へぐりのしび)の声ぞきこゆる 人見邦子 ずんずんと無口になりてゆく吾子が「釣りをしたい」とぽつりと言えり 早川志織 桃の花しづかに咲かせ一軒の古…

自爆テロの死者を数える 自爆せし当人は含まれるや否や 松木秀 傘を打つ雨音のなか陶器より冷えたる夜の桜を仰ぐ 守谷茂泰 猛打賞 ― 球場の宇宙ふかぶかと清岡卓行の一語詩ひびく 谷村はるか

ピラミッド内四千年の臭気濃く進むことのみ目的となる 藤田初枝 堕ちてゆく恐怖を思ふ上を向き歩かうと唱ひし坂本九の 黒田英雄 のいばらの花に玉なす夕露はニッポニアニッポンの涙なるべし みの虫 仮通夜は皆無口なり携帯電話(ケータイ)がしきりに鳴りて…

「夜の馬」久保寛容 落日は川面にモネを模倣してたちまちわれの村を暗くす 大いなる夜の青毛が来る河原とおくの橋から闇に入りゆく 神の名の星星の下残されて畑に傾いている一輪車(ねこぐるま) 「昼の苑」八木明子 卒業式のをとめの袴 とことはに地(つち…

「花群」大谷雅彦 花群のなかまつすぐに陽は差してやや湿りたる額髪にほふ くぐもりの二月三月われのみの桜咲かせて地図はにぎはふ われのみの花に逢はむと上り来し明けのみ吉野ただ白き嶺 「春陽」庭野摩里 水音がかろくなりたり北向きの黒岩沢に春陽めぐり…

ボリュームを一音一音上げていく足りない足りないなんか足りない 丸井まき 受胎せるからだの温み武蔵野は雪なき冬を諸手で抱く 河村奈美江 靴を踏み鳴らして過ぎるあれはこの都市の暗部だ見てはならない 花森こま 綾取りの橋渡し合ふひとなくて卓に置きたる…