2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

琺瑯のなべに煮立ててほのぼのと眉ぬらし飲むミルク紅茶を 渡英子 いだかれてみどりごはあり相寄れる悲しみの眉そこにひらくも 酒井佑子 土のない公園に葉は降り落ちて飴紙ひらくようなかそけさ 岩下静香 失明にちかづくドガが描きだす踊り子たちの影のかが…

歌人は雲の彼方に棲んでゐて出くはすときは妙なをばさん 矢野佳津 はるかなる石器にきみは選ばれて一万年後の青年となる 津和歌子 逝きし友が夢に現はれ華麗なる大車輪を見せてくれたり 助川とし子 何ものにも触れずに落つる初雪の全き淋しさわが指に受く 吉…

瘦せたから変わったという人生はいずれにしても軽い人生 鳴瀬きら 人生でいまがいちばん髭濃いと小池光が笑みつつ言えり 中井守恵 ひそとした二百のひとへつきづきの負の数いふにマイクはいらぬ 針谷哲純 わが家ではポチが一番朗らかだ残飯整理係と知らず 山…

鉄橋の真下に立ちて眼閉じれば我が身の内を列車抜けゆく 太田賢士朗 ひとことも口きかぬまま終はる夜うへに住む人ものを落としぬ 黒河内美知子 種のない柿が届いてダンボール一箱分のさびしい重さ 黒崎聡美 生真面目に無人の部屋で首を振る戦後日本の扇風機…

DIES IRAE (1) 伊波虎英 流出せしビデオに舞へる白鳥(しらとり)を無邪気な天使とおもへば愛(かな)し パーカーのフードに国後(くなしり)、ポケットに尖閣諸島を蔵(しま)つてあるく 観覧車とまりをる夜の観覧車めぐる道筋を時雨は打てり 追…