2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

もし神のあらばその愛、はつかなる塩大福のしほの味はひ 伊波虎英 *題「自由題」(2011.10.23〜11.25) *歌会詠草一覧(31首)は、こちら。↓ http://tankajin.seesaa.net/article/236035407.html

『惜別』に太宰治が描きたる仙台のまちは池のごとしも 中井守恵 計画的避難区域の浪江町にピーピーと線量計が哭く 嫌だと 大森益雄 母たちは lemming(たびねずみ)となり墜ちゆくや子らのためにと被ばくを避けて 黒田英雄 日本はひとつと皆がいふけれどいは…

那智滝の朝の響きの頭に入りてひと日を垂るる梅雨のをはりに 大谷雅彦 蒲公英の綿毛は夜も飛びゆくや眠りに入らむとするとき思ふ 原田千万 たたみたる四枚の翅ひらくとき黒やんまの尻ややも上がりぬ 杉山春代 紙コップの糸電話から聞こえくる秘密のはなしは…

カフェラテに更にミルクを入れて飲む もうなにもかも無茶苦茶になれ 森直幹 終電に遅れぬように店を出る 世界は僕のためになどない 森直幹 新しき本のカバーにとりあえず<ヤマダ電機>のちらしを選ぶ 若尾美智子 おはやうと手を振るメールのお返しに写して…

まつ黄色に家を塗りたる人のこころ知らざるも道の案内に便利す 吉岡馨 わが視野に嬉々とあらはるる蚊のかげの濃きときのあり薄きときあり 小出千歳 死と生のあはひにしばしたゆたひぬ蚊帳のなかにて目覚むる朝は 関口博美 ながく触れぬ琉球三線かき鳴らすし…

たとえたら例はたくさんあがるけど、君の瞳は真っ直ぐ過ぎる 野栄悠樹 父の名をカタカナで書く女生徒の右耳たぶのピアスはハアト 桑原憂太郎 ハンカチを口にくはへて手を洗ひその濡れた手でポケットさぐる 西尾正美 カツゼツの悪い車掌の放送で電車動かぬ理…

シャボンの玉 伊波虎英 原爆忌まぢかき真昼、乙女らの日傘は黒き雨傘となる 手を洗ふ無心なる時たまさかにシャボンの玉のひとつ生れたり 中年の昼寝危ふし目覚むれば剃刀の刃の錆びし臭ひす 水羊羹の喉ごしのごとやり過ごす日常の先に晩年が見ゆ 仰向けに転…