2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

すそ跳ねを気にしながらに傘閉づる乙女、見返り阿弥陀のごとし さすべえ > に傘ひらきたる自転車のおばちやん誰もだあれも翔ばず 伊波虎英 *題「雨」 *歌会詠草一覧は、こちら。↓ http://www.tankajin.com/utakai/utakai5/utakai5.htm

回顧される生とはいかに サルバドール・ダリ口髭の極端な反り 生沼義朗 午前五時のTVに美女四人ありて新作菓子を食ふ怖ろしも 酒井佑子 おわらひのビデオ集めを趣味として次女は笑はぬをなごなりけり 大橋弘志 母われを忘れて遊ぶ子の背に銀の背びれの揺れ…

駐輪場の錆のうきたる長き塀この世は辛くて寂しいところ 矢野千恵子 操縦技優秀士官皆散華着陸下手吾八十四歳 上原元 海に向くパラソルひとつ砂の上にあを濃き水のごとき影置く 下村由美子 ありえない論理で姪はわれに勝つモハメド・アリ戦の猪木のやうに 高…

犬の目から見れば人間みな名無し名無しの人が犬の名を呼ぶ 生野檀 キリストの言葉告げたる伝道者インターホンに顔を見せざり 森脇せい子 穴のぶん軽くなりたる切符もち階くだりゆく青梅雨の午後 洞口千恵 従業員と店主が深く頭下げ東北書店は店を閉じたり 助…

六月の雨に濡れたり パチンコの巨大モニターだけが饒舌 竹田正史 越え隔る山河呼ぶごと病む床に父は唄ひき長野県歌を 三良富士子 モネの絵は少し離れて眺むべしセーヌの川面の揺らぎも見ゆる 阿萬美奈子 お金はたーんとあると言ふときのたーんといふ響きが好…

「空色の日除け」若尾美智子 オムレツを食べながら読む朝刊になめくじの記事ずるずるつづく ほの暗きマンション街に空色の日除けはためく花店があり 旅行鳩五十億羽が乱獲で消えたる空は広くもあらず 「をりをり」山寺修象 カンボジアのノートのうちの一冊は…

◆『夏桜』 中野昭子歌集 もち重りするにはするが空洞で南瓜のごとき六十歳(ろくじふ)すぎぬ 二〇〇〇年夏から二〇〇六年夏までの著者 六十歳前後の時期の作品で編まれた第四歌集。 「人並み程度にいろいろなことがあった。」と いう、高齢の親、夫、娘、孫…

昏鐘鳴雨(こじみあめ)わらべのこゑで傘を打つ さよならあんころもちまたきなこ 駄菓子屋のラムネの壜のビー玉は虐待死せし子の魂(たま)ならむ 雷鳥の冬羽(ふゆは)の冷えとぬくみもつセーラー服の夏衣(なつぎぬ)の白 地下を女性専用車輌は梅雨雲とな…