2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

うら若き死者目覚めよと噴水の音きらめきて八月を打つ (終戦記念日) 父の梁、母の玻璃もて生(あ)れし子に針のやうなるうぶ毛光れり 嬉嬉として千万(ちよろづ)の児が菓子袋やぶく音して夕立は来ぬ 駐車違反のくるまを濡らす雨に濡れ朝鮮服の少女駆けゆ…

【扇マーク】 ミサイルが海に7発落ちた日の郵便切手は舌にざらつく 伊波虎英

剪らむとする公孫樹の幹に掌をあてて若き空師(そらし)は頭さげたり 竹内タカミ 今しがた啼きたる鳥のこえ蔵うメタセコイアのみどりゆたけし 荒井孝子 指先に蝶が止まってその瞬間母のない子になった夕暮れ 花森こま 雄馬の交尾するがに立ち上がり白骨と化…

女なれば何故か名をもて呪のやうに呼ばるる容疑者スズカ、スズカ 生野檀 暴走車になるつもりなどないのだが小学生が眼前にいる 幕田直美 譲渡書類に不備はなけれどわが店の農薬服みてひと一人死にき 西尾睦恵 年下の上司よくしゃべる男にて六月はやや上滑り…

武富士のポケットティッシュを詰め込んだ箱を残して母は逝きたり 池田弓子 牛乳パック三十個分を切り開き重ねくくりてはればれとせり 織田梨花 観覧車ひと回りして戻る場所ミナミは見下ろすかいのない街 大橋麻衣子 蝋燭の炎の揺らぐ絵を見たる一日は言葉少…

自転車を毎日こいで主婦われはこのまま空を飛ぶかもしれず 早川志織 飛ぶときも人の身丈の域を出ぬオホゴマダラの領すくさむら 渡英子 せいよくの淡くなりゆき、せいしゆんのただなかなりし歌読みかへす 宇田川寛之 おおいなる口現れて食われいるわたしの骨…