2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

星は今しんと冴えをり独り居(ゐ)の一口焜炉の青き炎(ひ)に似て 岡田悠束 虫の音に目を閉じており夜に鳴くひとつひとつを孤島と思い 守谷茂泰 みづうみにしづめし斧の物語 こころ貧しくあれば思へり 原田千万 鬱の日も鬱晴るる日もさりながらかたはらに置…

国立の癌センターの入口に車つかへて渋滞しをり 田中浩 八ケ月仰臥せし父、棺へと入りしのち立つエレベーターに 生野檀 骨密度三十代と褒められし九十の父が小遣いくるる 柊明日香 長雨の晴れたる朝(あした)庭さきに露をふふみて蜘蛛の巣ひかる 近藤かすみ…

誰ひとり顔を上げねど部屋ぢゆうの目玉がうごく咳きこむたびに 関口博美 塗れ染めし茶虎猫(ねこ)の毛のごとゆふぐれて河野裕子のゐない絶望 黒田英雄 南蛮絵の中にはだへのくろきひと幾人もをりて荷役をになふ 小出千歳 長き丸太の椅子の置かれて足湯あり…

暗がりに信号をまつ人影のそのちひさきがあはれわが妻 伊東一如 シルバーの派遣に頼り小屋一つ壊して雪の心配なくす 小松志津 戦争を煽りしあの日の新聞と名前変わらぬ今朝の新聞 野上卓 母親となりたる姉妹陽だまりに語り合うのを見るはうれしも 新倉幸子 …

アロマミストランプ 伊波虎英 アロマミストランプ灯せりぬばたまの夜を短歌に倦(あぐ)み疲れて 月かげの青を浮かべる湖ゆたちたる霧のかぐはしきかな キャンドルが文具でありしいにしへの夜よ、ひと恋ふ心のぬくみ 夕刊に小さく載りしルネ・ヴァン・ダール…