2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

LEDライトのひとつひとつには凍蝶一頭仕込まれており 生沼義朗 富士の肩に風湧き起こりきのふ人の死にたるあたり硝子光(くわう)せる 酒井佑子 「おーい、おいでよ」「はーい、おいだよ」ほのぼのと言葉の生るるある日のあした 本多稜 ぢいぢいがしにま…

あと一つ抜けば終わりの穴あきのジェンガみたいにいもうとは立つ 大橋麻衣子 木漏れ日が脚に絡むと吾に縋り歩める妻よ照れるじゃないか 関根忠幹 つくづくとけふの自分を嫌ふなりおのが影まで蹴りたきほどに 竹浦道子 空き箱を平らにひらけばむささびの飛翔…

大いなる物への恐れ入れる為人の脳には小さき空あり 岡頌子 上の歯で下くちびるを押ふれば「いかんといて」を言はないで済む 勺禰子 きつくない言ひやうなどはあらざると碗もて蒟蒻ちぎる夕べに 高橋とみ子 真白なる鯛焼き売らるる歳晩を怒りこらへて買い物…

とぐろ巻く蛇の頭をつかむごと受話器を握り父に電話す 鳴瀬きら 三年も探されている猫がいる今度は猫で生まれてきたい 鳴瀬きら 雪は雪を 母は私を 私は母を 生んでしまつて<しまつた>と言ふ 田宮ちづ子 七十の女が脂肪吸引に死せるを思ふ夕風の中 みろみ …

核兵器保有論者のさす傘もひらけり冬の雨ふる街に 大蛇(うはばみ)のごとくとぐろを巻く睡魔ほどきて母とテレビ見てをり 人として在る天運をおもひつつ日本人われ聖夜をすごす 「短歌人」一月号を待ちながら大晦(おほつごもり)のガラスをみがく わが家に…