2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

七歳のうでまつすぐに挙げられてちひさきゆびもあがりたりけり 矢嶋博士 古き社に続く細道自転車が自動車(くるま)従えゆるゆると行く 山田幸江 夕暮れの路地にまつ赤な櫛拾ふつくづく永井陽子の心地 助川とし子 うつすらと頬の生毛をひからせて少女が盆に…

亀鳴くという季語淋しめば路地に蹴るサッカーボーイも暮れてゆくなり 久保寛容 早おくりのヴィデオに講師あはれあはれキャバレー呼び込みのごとき身振り手振り 花鳥佰 天気雨ふりたる白昼(まひる)スーパーの鮮魚売場のきらめきてみゆ 松野欣幸 馴染まずに…

R300のカーヴをなぞりつつ試運転車の厳かにゆく 梅雨の入りまぢかき空ゆ額(ぬか)を射る光 短歌よさもあらばあれ (塚本邦雄氏昇天) 石走(いはばし)るあふみを思(も)へば戦ぎたつ城築かるるまへのさみどり 猜疑心を洗濯ばさみに銜へさせ乾梅雨空にはた…

<ログ103>◆017:陸 井上佳香 2005年08月11日 (木) 13時15分 1トンの鉄が着地をせしときに陸(くが)は煙をたてて怒りぬ ◆017:陸 矢野佳津 2005年08月11日 (木) 16時02分 恐竜の背中のごとくゆれながら天王寺駅前の陸橋 ◆019:アラビア 矢野佳津 2005年08…

<ログ100>◆060:影 篠田 美也 2005年08月01日 (月) 22時26分 逃げ水の向かうはつかにほほゑみて影を失くせし杉浦日向子 <ログ101>◆057:制服 萩原留衣 2005年08月06日 (土) 08時24分 メルカトル図法で描かれた地球みたい制服姿の私の写真 ◆049:ワイ…

漬物石に似たる平たき墓の前孫ら並びて小さき掌合はす 志田節子 さざ波が植田にたちて煌めいて白鷺の足ゆっくり動く 桂はいり くず入れに今日の新聞捨てられていて九州の梅雨を伝える 森直幹 滾る湯に白玉団子しずしずと落とせばしずしず浮かびくるなり 水田…

あふれだすまえに蒸発させられて職場にはただ熱だけ残る 猪幸絵 肉体の辺境(マージナル)である足ゆびのひとつひとつを愛撫する初夏 有沢螢 ひとのゐない夜のロビーにあるものは背中合はせの椅子のかたまり 蔵本かつ枝 様々な社会のひずみ一身に負いてレッ…

<ログ97>◆063:鬼 浦好 2005年07月25日 (月) 19時25分 在りそうと思いし般若心経に鬼という字の一つとてなし <ログ98>◆008:鞄 大辻隆弘 2005年07月27日 (水) 00時51分 丹念に鞄をみがきゐし父よ或いはかろき断念として ◆087:計画 飛鳥川いるか 2005年…

かくれんぼの鬼はこぬまま盗汗(たうかん)にぬれてこどもはおしいれに消ゆ 高澤志帆 また一棟びょうぶみたいなマンションが現われ街の風を遮る 岩本喜代子 ウエストに合はせてサイズを決めたれば殿中でござるといふ体になる 冬野由布 水のなかにふたつのグ…

ああこれが訛りて降れる月光か夜の日向のホームに仰ぐ 渡英子 天上に文書く人の筆の音聞こえるやうなはつなつの川 藤本喜久恵 樹々の闇くろぐろとして蛍よりまずこの闇に会いに来たのだ 岩下静香 人群の疎らにしあらばその孤独増しまさんものをゴッホ自画像 …