2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

水銀(みづかね)の電池左手(ゆんで)で光陰を刻む小春のF・マーキュリー忌 キリエエレ易損品積めるトラックの右折をせむと十字路に入る ご静養ばかり画面に映りゐて手を振つてみる手を振るきみへ 老い人が樹木抱(いだ)きて流涕する公園のこと噂に聞きぬ…

<第346回公募短歌館(「短歌」2006年2月号)> ☆小池光選 【特選】 & 今野寿美選 【佳作】 このくにの空を飛ぶとき悲しめよ李承菀(イ・スンヨプ)の本塁打はも 伊波虎英

よりそひて息子夫婦は帰りゆくあのやうにして老いてゆくのだ 竹内タカミ 蓑虫の赤子は風にゆゆゆよん中也忌の闇やさしく揺らす 佐藤綾子 耳鳴りは楽しみとせむ幼き日母が鳴らせしほほづきが鳴る 佐久間巴 外来の水草の株のふゆるままわんどの底にひそめるい…

母という器哀しき子の嘘を見抜くことなどできずともよい 荒木美保 ふるさとの冬のひかりに影あそぶ木の葉は土にわたしは石に 会田美奈子 遠吠えのような風吹く夕ぐれのすすきは白い狼である 森谷彰 真直ぐに逃げるしかなき野うさぎをヘッドライトのなかに哀…

水面に波紋のひろがる速さにてわれらの時は奪われてゆく 守谷茂泰 生きている不思議を思う薬師寺の西塔も少し古びて立てり 槙村容子 乾草といえば言下に否定され競走馬ゆえ飼葉を与う 柏木進二 鶏頭の十四、五本ある家ふかく時計の竜頭のルビーが翳る 西橋美…

なきがらを抱ふる母の乳ふさをしづけき牛の睾丸が押す 本多稜 東洋の魔女というべき様相の…たとえばミシェル・ウィー、ルーシー・リュー 生沼義朗 靴音が先に四階までとどく深夜に帰宅したる夫の 岩下静香 うつくしくかつ得意気に声を張る松山千春をうらやむ…