2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三歳のからだが騒がし抱きやれば熊野の海の潮騒ひびく 鶴田伊津 ガラス戸があくと酒巻酒店の紙の門松ともにあきたり 佐々木通代 日本のいなかの寺の本堂にくつしたのやぶれわれ見てをりつ 小池光 いつの世のどの宰相の夢なるか美しき国そのなれの果て 藤原龍…

雨のくる匂いがすると呟きて筆職人は腰をあげたり 宮本田鶴子 人体にうらおもてあり薪火に手温めをれば背中がさむい 佐藤大船 白旗をかかげるやうにA4の書類で誰かを手招くをとこ 池田弓子 ともかくも走ればよいといふことか二両の車両の色が異なる 中平敏…

箸の穂にあやつり食へば罪はふかく秋刀魚のわたのつくづくあまき 矢嶋博士 わが指をにぎる赤子をめりめりと三次元世界へ引き起こしたり 川井怜子 地下鉄の闇に消えゆく車輌よりほのか鋼鉄のあまい風立つ 新井れい わたくしを展開すれば不可思議な糊代ありて…

思ひつくままにあれこれ書きゆけば世界はすべて白と黒なり 薄葉茂 世にそむき嵐をねがうこともなく男の鼻の年月の艶 今井つとむ 来年の暦をややに高く吊る善きことあれと祈る思いに 伊藤直子 ダイエットに効なきバナナひと房は吊るされており夜の卓上に 堀口…

ひろげたる花壇図面の四つ角に鬱金香(うつこんかう)の球根を置く ふかき夜にさびしく鳴くは猫ならず み冬の贄に埋めし球根 猫のごとまだあたたかき湯湯婆(ゆたんぽ)はふとんから出てこたつに入りぬ 聖誕祭前夜(イヴのよ)のおほきカップにあたたかき牛…