2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

◆真木勉第1歌集『人類博物館(ミューゼ・ド・ロム)』 (桂書房 1994年3月10日 2000円) 244首 「アナタには合はせる顔がないない」と言ひつつ顔がなくなつてゆく バスを待つ見知らぬ人に挟まれてわれも見知らぬ人になりをり 虫歯五本虫の匂ひのする口の…

<第6回高瀬賞> ◆受賞作(2篇) 「六月輪唱」川井怜子 濡れて立つ木のさみしさに真昼間のプールはひとりひとり影ひく 廃線のうはさのバスが稲荷坂を唸り登れり涙ぐましも 雨あがる空のまほらをちちと鳴きいのちまるごと翔ぶつばくらめ ひかり揉む若葉の風…

隊商をはぐれしごとく空缶のうづたかき積み自転車ゆくも 川本浩美 渡りゆく鳥かも知れずサンライズ出雲の窓から手を振る娘 倉益敬 一輪の花を挿したる硝子器の向かうにしばしゆれてゐる妻 原田千万 樹をのぼる五月の水をおもひつつエスカレーターにひとり乗…

リモコンが敵に渡らば悪になる鉄人28号あはれ 田中浩 風凪ぎの空に釣り糸垂らしゐる父居るやうな春の雲見ゆ 下村由美子 春の日は旅に暮れゆく見はるかす水平線はとわに若くて 守谷茂泰 当選に遠き候補らのびやかに未来図を描く選挙公報 若尾美智子 死者生者…

「妊娠中」と身振りで告ぐる馭車がまたムチをくれをり身重の馬に 藤田初枝 桜さく広場のすみに自転車は「ああもういいわ」と倒れておりぬ 野中祥子 境涯をたらたら詠むのはもう飽きた意地悪ばあさんの見廻りに行かう 西尾睦恵 中古のバイク軋ませてくる能面…

嵐山光三郎を読み終えてゆるり口髭伸びた心地す 山本照子 唐突に新鮮な若者食べたしと食欲湧きぬ陽炎もえて 大畑敏子 水中のひかりにただよう藻のごとし太極拳を舞える老い人 越田慶子 おひとりでさみしいでしょうといわるればストンとすなおにさみしかりけ…

「鳥の巣」廣西昌也 老健に続く小径に桜散る痛いのだけは嫌ですからね わがうちに鳥の巣があるはぐくまれ飛び立ってゆく姿なき鳥 理不尽と渡世が混じりあっていてイチゴフロート美味なりにけり 「よろめく・コロボックル」西村美佐子 けふわれはコロボックル…

◆ 鞄とカバン 伊波虎英 「短歌人」に目を通していると、読み手としてはもちろん、同じ 実作者の立場からも、漢字とかなの表記のバランスや定型のリズム、 さらに破調の歌であればなおさら破調のリズムというものにもう少 し気を配るべきだと感じる作品にしば…

改刻をしたる象牙に朱の肉はしみてわが名のしら紙に浮く 二ミリほどみじかくなりし印判の淡黄白色ゆびにつめたし 関西風うどんをすする姪つ子もちゆるちゆるちゆると齢(とし)経むあはれ 真菰刈るヨドバシカメラに鴃(もず)の舌さへづりやまぬ階を漂ふ 喧…