2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

贋札によみがへりたる厩戸皇子にキスする老娼婦マリア 伊波虎英

助詞というやわき触手の生えて子のことばは世界つかみはじめる 鶴田伊津 どこまでも空を仰げる銅像に立て掛けられし箒を見たり 倉益敬 100ミリの豪雨の中を「川を見に」行かむこころのしたしかりけり 川本浩美 カール・ゴッチ死に小田実死に阿久悠死にわが晩…

ファールファールファール続いて少しずつこの椅子が空へのぼりつめてゆく 谷村はるか 草木の、土のかおりが心地よい雨後にんげんのわたしは臭い 大橋麻衣子 シャンプー台に微睡みおればかなかなの鳴くこえに似るタイマーのおと 平林文枝

仏蘭西の食材図鑑の野兎は魚のごとく眼をあけたまま 松野欣幸 「生き方は自分で決めるものなのよ」って塗り絵の好きなアンタに言われたくない 西尾睦恵 補聴器をつけて話せる母の声やさしくなりて夏は来にけり 柊明日香 緑濃き風が入り来る床の間の夏が好き…

背泳は旅人のごとせつなくて天井の染み指さしゆけり 佐藤あきら子 人形のごとく立ちをり菓子箱の積まるる売場にジェンキンス氏は 小出千歳 一通のメール欲りつつ夜の更けを団十郎の目ん玉を観つ 弘井文子 迷うことまだ知らざりし少年は柔らかき髪風に揺らせ…

◆『亡羊』 奥田亡羊歌集 「心の花」所属で、二〇〇五年に「短歌研 究新人賞」を受賞した著者の第一歌集。三十 二歳から三十九歳の時期の三四〇首を収める。 言葉にはならぬ思いを聞き役のアナウンサーがすらすらと言う カメラ越しの人々の<思い>は、ややも…

のやうなる夕焼けに何度染まらば滅びなむ日本 羽根よ羽根(ヨハネよ何処(いづこ))大風車発電塔よ洗礼者なれ 四十二年の寿命であらばあさひるよるよろこんで食ぶ中国産を 「鳥渡(ちよつと)、鳥渡(ちよつと)、鳥渡(ちよつと)」のギャグが舞ひやがて鳥…