2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

にわかにも押し黙るとき弟は木菟 (ミミズク)のごとひんやりとせり 木曽陽子 怒らねばならぬと思う思いつつドアを開ければ笑うんだろうな 高野裕子 唾を吐かなければ中国人ではないといふごとく中国人唾を吐く 山寺修象 われが警官ならわれに職質す、とおも…

今日明日と言われし母は代わる代わる子等とねむりてそして逝きたり 平林文枝 信仰を捨てしにあらず<信仰するわれ>を捨てたり父が死んだ日 生野檀 道問はれ吃りつつ喋るこのわれがもつとも憎し噓教へたり 田中浩 カラカラと笑う上司の眼の奥に怯えのごとき…

スーパーに空棚あれば近よりて何置く棚か表示読みをり 川井怜子 何か背負っているのだろうが頼むから冬木のように立たないでくれ 納谷孝 ビルの間を沈まんとする太陽はごみ箱ひとつ美しくせり 田上起一郎 ブロッコリーの粒粒なべて花となり野菜畑に異形をほ…

目の覚めて夢だつたのかと気付くまで時間がかかるやうになりけり 牛尾誠三 旅自慢の老人ひとり話すうちぽつりともらす子らとの疎遠 山根洋子 わたしには見えない道があるようでヘリコプターは今日もまた飛ぶ 黒崎聡美 寝ようかとまぶた閉じれば暗闇に「死」…

地上みな漆黒の闇その空につきさす様な細き月あり 下舘みえ子 こんな夜に星をみようときみは言うきみが夫でよかったと思う 黒崎聡美 吉兆としてまたたけり少年の少女のゆめに春の星々 藤原龍一郎 震度6強 日常断たれ見あげればオリオン痛きまでにかがやく …

原子力発電所崩(く)ゆ終末のむかうの未来かがやかせつつ 菊池孝彦 傷ふかくながく苦しむ原発は吾が産みし子のひとりなるべし 吉岡馨 航空写真原発のはだか我に見すさびしかりけり日本といふは 田上起一郎 立ち上がることはおそらく無理だらう平成の代に日…

悲しみはテレビ画面をあふれだしわが乱雑の部屋を満たせり 藤原龍一郎 早く逃げてとテレビ画面に右の手を我は思わず差し出しており 山本栄子 ビニールハウス呑まるるにただ息のむのみ空ゆく鳥の目となりわれは 古本史子 瞬く間に波にのまれし町おもひ人らお…

ソーテーガイ、ソーテーガーイ 伊波虎英 かさぶたのごとく桜の咲き継ぎてこの島ぐにの傷よ癒えませ 石垣と堀を備へしいにしへの城の怯えを知らぬ原子力発電所(げんぱつ) 四十年あたためし卵ひび割れてソーテーガイ、ソーテーガーイと鳴き声がする もろもろ…