2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

春の戯奴(ジョーカー) 伊波虎英 チューブ振りしぼり出したる歯磨きの白にも春の兆せる朝(あした) いつぽんの常緑樹なるコンビニに寄れば針の葉わが頰を刺す バーコードよみとられゆくその刹那、刹那、刹那を生者は死せり 衣更へせし人びとのゆく街にゾシ…

子を乗せぬ自転車のペダル軽くあり飛ぶようにゆき飛ぶことはなく 鶴田伊津 乗り手なき自転車鈍く光りおりこの春の陽を独り占めして 高野裕子 手にふれて銀の食器の曇れるをけふのいたみのごとく思へり 高田流子 太陽のつくりくれたる影を連れ山の辺に摘む蓬…

眼のごとく老ゆる硝子戸ゆるやかなゆがみの中に生家の庭見ゆ 吉川真実 石段をブーツでのぼる彼岸の日かかとに春の重力が響る 洞口千恵 泣きたいと思って泣ける歳は過ぎ発疹これがわたしの涙 大橋麻衣子 己が眼窩とおる小魚にふるさとの春を語るや大和のどく…

頭頂に賞味期限の貼られある寂しい卵をいつつ睡らす 佐和美子 思いきり蛇口をしめた音をさせ笑いはじめる松坂慶子 砺波湊 点燈夫という役のみに来てディケンズのページに瓦斯の灯をともしゆく 久保寛容 マネキンの小学生は大空へ希望の双手差し出してをり 斎…

処刑場囲む群集の子孫として我らカメラ付き携帯を持つ 伊藤壽子 吊革に手首をいれる癖があり前世は奴隷と思いしラッシュ 渡口航 桜咲く堤を見つつ草楽さ、回文つぶやく草なりわれは 本田鈴雨 上映会なれば見知らぬ人たちと並び観てゐる金魚の交尾 勺禰子 ふ…

ひつたくり注意呼びかくる声撒きて土曜の昼をゆく飛翔体 モナ・リザの微笑むに似て気味悪きへどろまみれのカーネル小父さん ラジオから松田聖子の「制服」がながるる弥生ゆふぐれにけり 五月恋ふわれの汚点(しみ)なる思春期のギデオン聖書贈呈式よ 山桜、…