2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

丹念に紐を巻きつけゆくことを楽しむ独楽を回すことより 鶴田伊津 短歌人会員2欄にただ一度勝野かをりの名のありしこと 大橋弘志 絨毯につまさき半ばしずませて素足に聞けり冬の訃報を 阿部久美 観覧車きしみ激しくとも回れ自業自得の地に降りるまで 八木博…

誰が死んでも花にも星にもなれなくて「ごんぎつね」ただ兵十が泣く 西橋美保 耳近くやさしい言葉云うときにあなたはかすかにかすかに訛る 谷村はるか 暗闇が届くところにあったころ生まじめな父は蛍であった 梶田ひな子 川に降れば川となる雪人生に無駄な出…

大いなる象の背中にゆっくりと冬の日だまりはこばれてゆく 荒井孝子 杖を持つふたりの人がバス降りて杖二本持つ人ひとり乗り来(く)も 川井怜子 カーテンのあらき織り目に数時間おくれの朝が行きなづみたる 松野欣幸 始業の日小緩き坂の自転車に冬の朝日は…

暁の四方(よも)の紅葉のただなかに緑の賢者楠の樹は立つ 松岡建造 日の落ちて寄せては引きゆく波際に黒ずみてなほ黒く立つ人 田上起一郎 村田兆治139kmを今も投ぐ腕高く吾は冬の窓拭く 吉岡馨 砂の匂いこぼす男の眠りさえしずかに運ぶ東京メトロ 砺波湊 雑…

「メヌエル」多田零 メニエールよりもメヌエルがふさはしいかかりてみればこの病ひとは おもてには車の音す雨の夜のとばりに傷をつけつつ走る しろき花瓶はわがてのひらに運ばれてふと愛玩のうさぎのごとし 「大晦日まで」岩下静香 雪ふれば雪ダルマという単…

孤独なる男振りたる電球のフィラメント鳴り極まる秋ぞ 親指とひとさし指でこめかみを同時に指せば飛ぶ輪ゴム弾 くれなゐの輪ゴムを部屋にばらまいて眠らむ今宵、自死さながらに コインパーキングだらけの街にふる鴨脚(いちやう) 先腹(さきばら)さらば追…