2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

卵をかざす 伊波虎英 電灯に卵(かひご)をかざしあかねさす昼の鬱(ふさぎ)を幽閉したし 聖書(バイブル)の天衣のごとき薄紙にわが指先の獣脂吸はしむ 禍津日神(まがつひのかみ)は叫(おら)べり手まはしで防災ラジオに電を充たせば うかららの霊の鎮(…

【扇マーク】 元警視庁捜査第一課長氏の推理みごとに外れて、うらら 伊波虎英

下染めに緋色をしづめ激しかる日本の黒喪家にならぶ 武下奈々子 臆病な鬼が靴履き出て行くもすぐにわたしの闇に戻り来 阿部久美 垂直に立ちつつ回る独楽の芯見てをりここに生きるほかなく 原田千万 大き尻壁に押し当てたゆたへる象のウメコに春風が吹く 秋田…

玄関にビニール傘はひらかれて深夜ひかりを集めつつある 猪幸絵 不器量を言はれながらにタンカンは配られてありランチの卓に 池田弓子 祖父よりも日に日に祖母に似る父の人呼ぶ声も細くなりたり 下村由美子 法廷画家のうなじは太し引き結ぶ被告の唇を写し取…

飽きもせず外を見つめる猫の背の丸みがこころに刺さつて、弥生 藤田初枝 短歌(うた)をよむに上手な人は変人が多しと言ひてなぐさめてゐる 正藤義文 けだし桜はあはき花芽をふくらませ人の寂しさつゆぞ想はず 山本じゅんこ 除草剤蔵ひたる納屋春なればほの…

朝昼晩もりもり御飯を食べながら夫は米の値段を知らない 山本照子 美しき蜻蛉(とんぼ)玉得し我が物といふをためらふまでにうつくし 梶崎恭子 春の日は影ひきながら赤光会斎藤病院門をとざせり 越田慶子 おのが身の咀嚼され胃に落つる音をはりに聞くかパン…

「春の顛末」斉藤典子 ダリ展のチケット購ふいくつもの不合格通知受くる子のため 「おもひで」大橋弘志 六歳のころかさびしく食堂で母とうどんを食ひしおもひで 母の苦を歌に変換するわれを酷い息子と妻よ言ふなよ 「春の雪」藤本喜久恵 新しき舗装路黒く光…

放埓な馬のひづめに音叉見ゆ すなはち吹けり春一番の いつの日か柘榴のごとく(異常気象世界めぐりき)地球は割れむ みづうみと海の婚(くながひ) 天あふぎ地上のわれら沈みゆくのみ 高瀬賞応募用紙とわが歌の四百余文字をデジカメに収む 短歌(うた)はわ…