2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

はじめての海は熊野の海がいい。ざぶーんざぶぶと波音教え 鶴田伊津 みづからの影しまひたる樹はすこし太りてをらむ六月闇に 大谷雅彦 座布団を抱へたひとが待つてゐるバス停「泪橋」、夏昼下り 渡英子 我が骨を砂時計にして子孫(うみのこ)とお好み焼を焼…

言われればみな真に受けていた日々の踏まれて影は痛んだろうか 谷村はるか ランボー、冬衛、共に右脚切断 在りし日の詩人ふたりの切られたる脚が時計の針になる夢 山科真白 一歳は天使にあらずびりりりと新聞裂きゐる影悪魔めく 下村由美子 食べるのを拒むも…

天上より降りくるものを待つごとく屋上駐車場にくるまは集ふ 松野欣幸 筍とわかめ煮ふくめ寂し寂しもう歌詠まぬと言ひし人ゐて 小出千歳 起き出でてふかく息する二度三度きのうの続きとならぬまじない 越田慶子 ドードーを食ひつくしたる動物は棍棒といふ道…

公園のベンチで寝ている人がいて靴はきちんと揃えられいる 大矢信夫 片目出し体はすべて覆われる脳は手術を想像で見る 福田ミノル 棚の位置また低くして房総の海辺に暮らす伯母九十歳 藤間明世 南国の土産のひとつ「星の砂」我が手のひらを宇宙となしぬ 直井…

雷鳴はけふ一日のエピグラフ いつか死ぬるを忘れて目覚む どす黒きアメリカンチェリーが朝刊の折込みちらしでぎらついてゐる しよぼたれた仔犬のやうに傘の群れふるへて駅のなかへと消えぬ 独り暮しの慰みのため置物のタヌキ盗みし中年あはれ 目があふとおも…