2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

おほくちの真神(まかみ)獣舎をひたぶるに回(めぐ)る安息日朝十時 伊波虎英 (☆11/25付「さるさる日記」参照)

カーテンの捩れにさへも人間の苦しむ様の顔のうかびく 大橋弘志 人が一人電車の中を縦に通り悲しみがあとに蹤いて行つた 酒井佑子 滑り台取り外されし公園から葡萄のような子らも消えたり 鶴田伊津 多摩川増水 かたくなに救助をこばむホームレスにしばしここ…

【松村正直さん選 (番組で紹介できなかった分)】 コンビニの斜め向ひのコンビニが影武者のごとき朝の国道 伊波虎英

孵りつつある卵食う民族とメニュウは告げぬ神話のように 森澤真理 スタンドに両手を上ぐる選手たち腋下あかるくひらかれてゐる 紺野裕子 平衡感覚すこしつかれて帰省せり火がよくつかぬ迎え火の藁 高澤志帆 思い出は写真どおりにおもいだす海を背にして笑顔…

おほいなる馬のお腹にゐるごとしもんもんと気温三十七度 洞口千恵 戻りくるノラがふぐりを捨げ出して踏んでもいいよとばかりの残暑 林とく子 くそつたれくそつたれくそつたれくそつたれ!四度叫べば哀願となる 黒田英雄 労働のさいごの力でシャッターをおろ…

草の匂ひつれて爺ちやん帰りくる藁しべに牛蒡抜けさうに括り 大畑敏子 叱つてもまだ笑ひよると婆さんが孫叱る声路地にひびけり 牛尾誠三 あきるほどながめてもなお微笑んで弥勒菩薩はただ美しく 戸川純子 赤信号を渡る女はおしなべてまずしきフォームにて走…

◆『流亡の神』 米口實歌集 「眩」を主宰している著者の三三七首から なる第四歌集。今年八十五歳になるというこ とで、おのずと老いや死をみつめる歌が多い。 白桃の和毛(にこげ)ひかれり老いびとの食みあましたる夢のごとくに 股関節を確めながら起きあが…

噴水のみづのじゆんくわんちちのみの父にあらざる我にしぶける 市境を長(をさ)の斑声(むらごゑ)越ゆるとき真暗き空にきざす陣痛 晩年の昭和天皇(ヒロヒト)のごとく三脚は闇に立ちゐきカメラを据ゑて ぼろ雑巾しぼるがごとく汗は出づ体脂肪率ひと桁なれ…