2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

大陸で拵(こさ)へしビニール傘越しに白雨にかうべ垂るるひと見ゆ しののめに富士の山みる狂者守(きやうじやもり)『赤光』初版に居るは恋ほしも ユリ・ゲラーにひよいと曲げられたる銀のスプーンのごとく人を殺むな 高齢化少子化の世を天照らす女帝候補が…

【扇マーク】(コーチとやりとり) 1000万画素のデジタルカメラから複眼の蚊の羽音もれくる

狂ひたる壁掛け時計はいつみても全き自由のなかに動ける 梶崎恭子 エレベーターのボタンを押せばつかの間を爪のひとつにくれなゐ点る 辻田洋美 服脱ぎてそのまま置けばそのままにくにゃりと拉げわが過去になる 菊地威郎 振り返ることはもうよし雨衝きて生き…

白皿の煮物に散らす空豆を仕合せの欠片と今思いたり 山田幸江 東北の男はむかしのにほひして父のごとくにふるまひたがる 花鳥佰 陽炎のごとき喪服の親族の一人となりて陽炎に入る 吉川真実 てつせんの垣根の前にわが犬は名を問はれをり美しき敬語に 大越泉 …

煩悩をながく吐ききし右よりの旋毛のあたり髪うすれたり 染宮千鶴子 ロダン彫る「考える人」凛々しかり吾細ぼそと「考える葦」 杉山みよ子 夜の橋にひとり立ち止まり眠らない水の流れをふと怖れけり 守谷茂泰 褐色のナチ党制服映しつつうぬぼれ孔雀のごとき…

飛び込むも飛び乗るも良しホームにて「間もなく来ます」の表示点灯 菊池孝彦 蟻を殺しなめくぢを殺し自らを幾分の一か殺しけり今朝 酒井佑子 今ははやひすがら微睡む老い人の脳裡にうねるか麦秋の野は 望月さち美 ひもすがらよもすがら降る梅雨の雨わが残年…

◆「太陽の方向」天野慶 隕石にぶつかるほどの確率のはずの事件が毎朝届く 「白亜紀の掟」について語られて眠くならないほど愛がある ◆「赤信号青信号」生野檀 雷鳴の合間をぬって豆腐屋が豆腐を売りにぴいぷうと来る 死後のはた未生の闇に還るべく最終電車が…