2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「マグリットの鳥」杉山春代 *一連30首より 図書館にどつぷりひとひ腰すゑて一時あづけの荷のごとくをり 棚経を終へたる和尚むきなほり娶りしことをなめらかに告ぐ 自転車に蛇行しゆけるのぼり坂はかりがたしも坂の苦痛は かなかなの鳴きやみしのち遠巻きの…

我の声急にあかるし教室の窓より見える虹に気づきて 岩下静香 藤原さんの解説すばらしいとわが歌集評する便りに一寸複雑 宮田長洋 すでにして秋の星座となりし夜を鳥威し銃は不規則に撃つ 石川良一 頂きし柿の葉寿司の紅葉を机に並べ三日を経たり 中地俊夫 …

薄き和紙重ねるようにさよならを言わないままに遠くなる人 吉川真実 満ちては引くをんなと思ふ片意地に 助けになんか、勝手に来るな 平居久仁子 担がれしこともなければ担がれて来る神さんをあわれがるなり 西川才象 のりピーと呼ばれ思はず微笑みぬ警察署よ…

浜、湊、津など海辺を思はする駅を通りて堺に着きぬ 長谷川知哲 「生まれ変ったらどうなりたい?」「なに人でもいいから自分の国で生まれたい」 成田さだこ 今日逢ひし人びとのこゑやさしかり声なき家に吾は帰りゆく 渋谷知子 ギリシアより伝播のイオニア式…

帳尻合わせの人生の息子よ息子よと甘ったれる人がいる 篠塚京子 何事かわからぬ音が鳴り響きなにごともわからぬままに過ぎる日 渡口航 秋天に午後の時間は吸はれゆき草に止まりし蝶も動かず 高橋愛子 孫や子に命を託してゆけること百の短歌に優るとおもふ 河…

「葉桜と魔笛」の姉妹にきこえ来しくちぶえのごとき歌を詠みたし 鳰(にほ)の湖(うみ)飲み干しし夢見し朝に母をみごもる我のあるべし ダイソンのサイクロン式掃除機に吸はれゆく死のあらば安からむ くれなゐの皮にほんのり染まりたる林檎のやはき実のなま…