2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

冬木となるメタセコイアの明るさよ空へ帰りしまなこはいくつ 守谷茂泰 さびしさはわれのみぎ手を引きよせて咬まむとしたり口あける母 紺野裕子 ファックスに滲むインクを凝らし見る訃報いちまい簡潔にあり 関谷啓子 指が歯のやうにゆらぎてひとつづつ抜けて…

樹の翳を揺らして風は過ぎゆきぬ文字のなき世の言葉のごとく 洞口千恵 コンビニに購ひ書けばわが名前ペン先ゆ滲みゆく香典袋 佐藤大船 ぼくに子の無いことを知る図書館の吏員に『赤毛のアン』を差し出す 久保寛容 押してあるいて止まってすわるおばあちゃん…

だれひとりあふ人なければ此の世とは思へぬ大歩危ひえびえ歩む 高島藍 エンジンをかけつぱなしの助手席に運転出来ぬわれは残さる 中島敦子 避難訓練誘導にしたがひ建物より出でたれば知るなんと今日の青空 吉岡馨 店先で貰ふ風船増えゆきて色とりどりの雲飼…

大声で叫べば届く距離なれど携帯電話(けいたい)ゆえに局番を押す 有朋さやか 爪痕の残るてのひら力では握れないもの握ろうとして 工藤足知 縋る手のなき吊革を小刻みにゆらし過ぎたり回送列車 佐藤由美 自画像はだれもが暗き顔をして卒業制作展に並びぬ 海…

DIES IRAE (2) 伊波虎英 頷きてわれらの祈りききたまふ神はさんざん黄葉(もみぢ)を散らす 秋の冷え湛ふるりんご十個ほど今年も食めりコンポートにして おのづからわれより出づるこの朝の洟が知らせる冬の到来 あらかじめ果実さまざま入りたるヨ…