2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

すつぱだかの母音にすこしづつ喉の力がついてアイからハイへ 本多稜 一滴のインクの青の存在を確かめるごと泣く ひとしきり 鶴田伊津 ドッペルゲンガーがけふもどこかで死んでゐるあるいは東電OLのやうに 橘夏生 信号を守る若者もどかしく見えて追い抜く御…

説明はつかないけれど会社では私に対する評価は低い 森直幹 世の中をはすかひに見る我がゐる、否、世の中こそはすかひならむ 高山路爛 まつさらな五月の空はどこまでもまつたくもつて煌太日和だ 近藤かすみ 奔放な歌詠む友の休みいて律儀な歌群しだいに重し …

参道にかへりみすれば東大寺のうへに空あり小さき空が 高島藍 俊成の「の」の字うつくしものひとつ知りてしづかに終るいち日 水原茜 五月尽ひかり増さりて老木はおのれの影に凭れてゆくも 三島麻亜子 くたぶれし皮袋より排泄をなすときひとはいづへにただよ…

わが臍はここにあるぞと大空を仰ぎて今朝も深呼吸する 小野さよ子 待ちに待ちしわが生命保険の祝ひ金塗料となりて屋根かがやかす 岩崎堯子 ありがとうさよならまたねそんなとき若葉が背中に生えくる痛み 今井ゆきこ 石段を地蔵の影が這い登る 登りきれずにい…

産んだのか生まれたのかもわからない深夜の闇に目を開けている 天野慶 <ミッキーの家>に嫌いな人が来ても抱き合わなければならぬミッキー 生野檀 生き残りたる者の持つかがやきにジャネットいよよマイケルに似る 生野檀 補助輪の浮き上がりたる自転車を風…

◆ キングの言葉 伊波虎英 <細部、細部、真実は細部に宿る。そして目で見たことは、言 葉にしてくれと叫ぶものではないか?><手はじめは自分が知っ ていること、そののち、それを再創作する。芸術は魔術だ。それ に異論をとなえるつもりは毛頭ないが、あら…

仏壇にほころび初むる芍薬の丸きつぼみの玉を惜しめり ゴキブリの家(うち)をつくりて片隅におく真夜ふとも辺野古をおもふ 咲きのこる丸きつぼみは小さかり貌佳草(かほよぐさ)とも呼ばるる花の 代金を前払ひすれば髪の毛は十分ほどで刈られてゆけり 十三…