2013-01-01から1年間の記事一覧

年末恒例題詠◇わたしの愛読書 宗教で囲へば逃げてゆく神のあかんべえする桃色の舌 二十年前に手にした遠藤周作の『深い河(ディープ・リバー)』 には、学生時代に親しんだ彼のこれまでの作 品(キリスト教系の学校に通っていた僕にと って遠藤周作の数々の…

秋の訪れ 伊波虎英 製菓場の跡地に埋まるエンゼルの墓碑として建つ分譲マンション 吃音の男児が ま、ま、ま、吃るたび ま、ま、ま、真つ赤な曼珠沙華揺れる 公園の鳩はついばむぽたぽたと老婆がこぼしゆける記憶を ユニクロのチラシが秋の訪れを教へてくれる…

おほいなる交合 伊波虎英 恩愛は助詞の「の」にあり〈精神の病〉と宇多田ヒカル記せば 七年ののちの五輪の開催をよろこぶ人をテレビに見をり にんげんが汚せし海と交合(まぐはひ)を遂げたる若きイルカの夢精 怒(いか)ること知らぬイルカはおほいなる交合…

八月のうた 伊波虎英 ペットボトルふふむ少女は指さきに可憐な花を咲かせてゐたり 八月に生まれし母子に母だけが知る夏ありぬ二十二度(たび)の 「栄光の男」の歌詞のある箇所が心にひびき深く落ち込む 唖蝉のやうに黙してスマートフォン撫でる少女の熱き血…

ふらんす堂 「日付けのある歌 短歌日記イベント in パルコブックセンター吉祥寺店」 (2013.9.23) ◆日記・日付にまつわる短歌(2013.9.13締切) 8/31投稿 ◆ゲスト選者の小島ゆかりさんと東直子さんお二人が佳作に選んでくださいました。…

カメラ・メランコリア 伊波虎英 鬱鬱と梅雨の晴れ間をゆく我はレンズキャップの外れぬカメラ ユニクロへステテコ買ひにゆく時も監視カメラに見張られてゐる 証明写真の機械のなかに入りたる人の脚だけ見て通り過ぐ 日常に潜む運命をやりすごす防犯カメラのダ…

ペットボトルふふむ少女は指さきに可憐な花を咲かせてゐたり 伊波虎英 *題「水」(2013.7.17〜8.25) *歌会詠草一覧(26首)は、こちら。↓ http://tankajin.seesaa.net/article/373065093.html *選歌あり(ひとり3首) 僕の歌は、秋田興…

DIES IRAE (7) 伊波虎英 黒日傘さしてゐるかのやうにゆく顔みな暗き日本の男 古書店に歌集ひらけば付箋あり「言葉が多い」とのみ記されて 網の目をまとふキリンの舌黒く脱走未遂兵のごと伸ぶ 軍場(いくさば)を入り乱れては嘶ける馬に滲める汗、…

DIES IRAE (6) 伊波虎英 百尊の千手観音十万の手をうち振ればさやぐ新緑 世界遺産を辞退もできず富士山は噴火する日をしづかに待てり まばたきをせずに見つめるまばたきをせぬまま語る石破茂を のんびりと湯船につかる日本人少なくなりて改憲近し…

◆ 短歌の鑑賞について 伊波虎英 短歌の実作と鑑賞は車の両輪のような関係だと最近つくづく思う。 と言っても、良い歌を作る人は鑑賞文が上手いとか、鑑賞文が上手 くなれば良い歌が作れるようになるなんてことが言いたいのではな い。何も鑑賞文を書くことが…

浪花かしまし 伊波虎英 咲き急ぐさくら三月たかじんが戻つて来たと浪花かしまし (濁音のある)ラジオから(濁音のある)テレビへと澱は積もりて (濁音のある)テレビから(濁音のない)ネットへと上澄む世界 百グラム体重減るはなにゆゑか左足からはかりに…

SOS(サウンド・オブ・サイレンス) 伊波虎英 沈黙の楽(がく)を鳴らして運命はわれらの少し前を歩めり 良き歌を朝日歌壇にみつけたる週のはじめのきな粉牛乳 サイモンとガーファンクルのハーモニーまみれで歩くつちふる街を スギ花粉、黄砂、PM2・5…

【固有名詞の一首 自歌自解】いつもいつも「次は次屋(つぎや)」の案内に笑ひてわれらバスに揺られき 〈われら〉 とは、父母と妹とぼくの四人。 三十五年以上も前のぼくたち家族四人のこと だ。当時、近所にショッピングセンターなど なく、ちょっとしたお出…

ロテリア・デ・ナビダ 伊波虎英 音楽に倦めば異国の宝くじ抽選会をユーチューブで見る スペインの少年少女が唱ふれば五桁の数字は意味を持ち初む 神々しき声で少女は唱へたり異国のわれを抒情させつつ 定型詩詠むは異国の少女らが数字唱ふる神(かむ)さびに…

冬のうた 伊波虎英 稜線をとほくなぞれば指さきに冬のねむりの鼓動つたはる ぬばたまの種田山頭火ァカァカァー酒恋ひしくて啼いてゐたるか シャッターに触れれば街は身構へるフィルムのなき銀塩カメラに カレンダー遣るから所定のアンケートに答へに来よと銀…

神様になりそこねたる雪が降るふかくしづけき大地に焦がる 伊波虎英 *題「雪」(2013.1.22〜2.28) *歌会詠草一覧(27首)は、こちら。↓ http://tankajin.seesaa.net/article/333293588.html *今回は選歌があり(ひとり3首)、 僕の歌は…

キラキラネーム 伊波虎英 個々に名をもたぬ紅葉(もみぢ)の樹々の下キラキラネームの児を母は呼ぶ 母が児を呼ぶこゑ聞けば幾つかの漢字舞ふなり我のなづきに 信仰を棄てし一樹もあかく染む羞恥のこころ神はもつゆゑ 母たちはくれなゐ、児らはだいだいに紅葉…

いちぢんの風 伊波虎英 今もまだ阪神電車に揺られゐむすこし疲れて岡八朗は 注ぎたる水にグラスはぐらつきぬ胡麻ひと粒のもぐりこみゐて みどり濃き菠薐草につぶしつつ胡麻をふらせし母のおゆびは 海原のかなたに生れて海原のはるかに果つるいちぢんの風 風…