2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

植木屋のはさみ鳴るそら極月のわが誕生日なにごともなし 紺野裕子 はんぶんの細好男(ささらえをとこ)に見送られ残業帰りのこはくないのだ 高澤志帆 みどりごがはじめて硬きものを得つ 下顎前列乳歯生え初む 本多稜 右足を前に掲げて踏み出せる広告ポスター…

その畑はマネキンの首並ぶ畑まばたきをせぬ眼ならぶ畑 磊実 円心を同じうしたる弟の狂はむとするかすかな波動 有沢螢 右目にはまだ覗かせたことのない万華鏡のなかの世界を 魚住めぐむ 仮想する巨体の敵に対峙してひたすらに蹴る夕陽の少年 久保寛容 渡り鳥…

薄日さす午後聴いている陽水の歌にはバスの旅多くあり 砺波湊 分水界(みくまり)を歩くはさびしうす青き双の耳よりしのび来る冬 関口博美 夫より借りし自転車こぎながら五センチ高き秋風を吸ふ 春野りりん 太陽の匂いは母の匂いするわっと抱きて蒲団取り込む…

坂道を登れば影が立ちあがり能動的にうごきはじめつ 今井ゆきこ Yシャツの胸ポケットの底からは頭痛のもとのようなクリップ 黒崎聡美 怒鳴るとか微塵も思(も)わず出てしまう自分の声を恐れる夕べ 芦田一子 深閑と火を継ぐ枯葉見てをりぬ日ぐれにとほきと…

◆ 「短歌人」二〇〇九年の十首 伊波虎英 短歌商業誌では、年末に年鑑を出したり特集を組んで、その年 の歌壇を総括するのが恒例である。結社誌である「短歌人」にも、 同じような企画があってもいいのではないだろうか。以前から、 編集委員各氏による<「短…

明日を死ぬ人らに夜ごとほほ笑みて鬼面の瓦ひび割れてゆく 黄葉に肥(ふと)る鴨脚樹のかがやけるさまに男をあざむく女 二十年前のティッシュに包(くる)まれてコンクリ片ありベルリンの壁の ベルリンの壁の欠片をひとつ入れ白く濁れるフィルムケース よぢ…