2006-01-01から1年間の記事一覧

十月九日、北朝鮮が地下核実験を実施。 半島ゆ地震波はきて芳(かぐは)しき金木犀のかをり震はす 皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)の敷島のプルトニウムゆ鳥はとびたつ 人類が滅びし朝にチャチャホウチャ、ホー、チャチャホウチャひびく囀…

【扇マーク】 戦争でやがて死にゆく子どもらよ飲酒運転車に気をつけろ 伊波虎英

みどりごの乳乞ふごときさびしさを入浴剤の白に思ほゆ 森俊幸 日輪の旗翻へる時哀しめよ三島由紀夫の長き睫を 二子石のぞみ ウミイグアナの険しき凹凸おもふとき滑りのかるき人間(ヒト)をさびしむ 水原茜 毎年を岩手のぶどう届くなり本支店勘定の取りもつ…

身の丈のやや低くなるはつあきは地を這ふものらことに親しき しろがねの刃の翳るとき梨の実のうちより雨の音聴こえ初む 洞口千恵 芝居小屋のモギリの青年(おとこ) 半ズボンにネクタイ締めて夢を見るなり 蜂須賀裕子 生卵の好きな子供は呪われて病院通いの…

ひと色に染められそうな国に住み山葵の味のかりんとう食む 若尾美智子 この国に国有鉄道ありし頃雲はゆっくり漂っていた 村田馨 反応の無けれどいとも楽しげに仮設舞台に踊る看護師 佐々木通代 だうしやうもなく眠くてたまらぬ 旅先から子供がマリモを持ち帰…

日ごと夜ごと殺人つづく列島のパンティ泥棒われを笑ましむ 大橋弘志 それとなく秘密めきたる今日の空でんぐり返しでぐいと近づく 佐藤慶子 出勤の前のテレビに我が見しはボクシングにて飛び散れる汗 梶倶認 高く手をあげて歩道を渡るとき水子地蔵ら後につき…

九月十五日、麻原彰晃の死刑確定。 朝羽振る反上祐派、夕羽振る上祐派 オウムの亡霊よ 前かごに花束容れし自転車の倒れて街は喪船となりぬ 新庄の美学、桑田の哲学のいづれに九月秋さびゆくや カスピ海ヨーグルト腐敗してをりぬ「曖昧模湖」と誤植のあれば …

◆ 鉋とノミ 伊波虎英 紫陽花の影絵となった白昼にわたしの首が座礁している 十月の雨降る森は眼帯の少女となりてけむっておりぬ 守谷茂泰 枯れつくすときを迎えむわが詩藻 水子供養の飛行機草も 人殺すわれかもしれず敗戦日黙祷のあと顔あげてゆく 八木博信 …

娘だった頃の話をする祖母は干菓子のような笑みを浮かべて 砺波湊 洗ひ髪ぎつと搾りて塊と成せば青魚(あをな)の首這ふ如し 河村奈美江 ああこんな日日もあったな 精一杯ぶどうの房は張り詰めている 桂はいり 悲しみはさばの味噌煮のなれの果て小骨がのどに…

あやしげな歌評のまえに一本の歌の姿は爽として立つ 久保寛容 屈むひとの布のうちなるうすき胸透けいるごとくありて哀しも 平林文枝 百歳の父のあくびの吸ふ息に越前くらげほそりつつ消ゆ みの虫 食べる女(ひと)の耳裏のネヂうごくみゆストリッパーの靴裏…

何もかも包んでしまっている母の終い忘れのひとつか我は 磊実 チェーンソー唸りほどなく合歓の木は倒れつ影に吸はれるやうに 佐々木通代 音楽が鳴れば体は揺れだして海があったら飛び込むだろう 猪幸絵 明方の雷ひびくなか冷蔵庫に卵のいのち茫と点りぬ 守谷…

有り余るもの整然と現王立戦争博物館旧精神病院 本多稜 硝子戸に猫背の母の泛びたり稲妻は見する昼の幻覚 西粼みどり 短歌は詩さうだけれども詩心の枯れて歌詠むことに意味ある 大橋弘志 言い方が母(オモニ)と袋(チュモニ)は似ておれば「お袋」というこ…

主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました。 なんの喩であらう迷惑メール(SPAM)の件名のオオアリクイのながき舌伸ぶ 局地的豪雨にけぶる葉月(はちぐわつ)に都市伝説は生ひ茂りゆく 天飛ぶや高校球児が軽々と金属バットをふり夏は去(い)ぬ 負…

返照の首都のビル群こだまする「チッチキチー」に崩れてしまへ ブラマヨは の略だぜと父にうそぶくニートの息子 伊波虎英

◆「天文台まで」守谷茂泰 木犀の香が柱へとしみてゆく生家に小石のごとく眠りぬ 天文台へ行くバスのなか誰も居ぬ座席が鰯雲となりゆく 拾いたる落葉に地図の浮かび出てこの秋も乗り遅れたままだ 銀杏の葉落ち尽くしたる青空は鳴り出す前の楽器のごとし 電飾…

わたくしのははであるから困るのよ爪などのびし手をみたときは 朝生風子 この家に病む人在りといふやうに石塀の上猫すれちがふ 野上佳図子 じょうろへと光を集めひとすじの虹を発する朝の水やり 里川憐菜 弾みつつゴミ収集車過ぎゆけりのみ込みきれぬ段ボー…

ほくろまで流されさうなる汗流しメロンその他の受粉してきぬ 林とく子 愛想よき笑みを残して町内の一万歩を行く男が通る 原田美代子 手漉き紙ふうはり飛んだやうな空夕月が白いまま浮きてをり 栗林菊枝 目のあらぬ豆腐のサイコロぱらぱらと鍋へ入れつつ三十…

水を打ちまた水打ちて聴きており夏日に灼けし庭石のこえ 上原元 選りて買ひししのぶの風鈴わが軒につるせば我が家の音に鳴りたり 青木和子 悪声と気づいてしまう 原爆を語る小百合の白きブラウス 森澤真理 出てこない飴を取り出すために振るドロップ缶の穴底…

夜の水に昆布をひたし朝までの過ぎゆく時間水屋にとどむ 真木かずさ つくづくと十指きたなくパラフィン紙よそほひてゐる本を取りだす 多田零 ただ水を出す器にとなり果てむししむら、夏の膝下にありて 生沼義朗 自転車のチューブに密閉されをりて空気くるし…

うら若き死者目覚めよと噴水の音きらめきて八月を打つ (終戦記念日) 父の梁、母の玻璃もて生(あ)れし子に針のやうなるうぶ毛光れり 嬉嬉として千万(ちよろづ)の児が菓子袋やぶく音して夕立は来ぬ 駐車違反のくるまを濡らす雨に濡れ朝鮮服の少女駆けゆ…

【扇マーク】 ミサイルが海に7発落ちた日の郵便切手は舌にざらつく 伊波虎英

剪らむとする公孫樹の幹に掌をあてて若き空師(そらし)は頭さげたり 竹内タカミ 今しがた啼きたる鳥のこえ蔵うメタセコイアのみどりゆたけし 荒井孝子 指先に蝶が止まってその瞬間母のない子になった夕暮れ 花森こま 雄馬の交尾するがに立ち上がり白骨と化…

女なれば何故か名をもて呪のやうに呼ばるる容疑者スズカ、スズカ 生野檀 暴走車になるつもりなどないのだが小学生が眼前にいる 幕田直美 譲渡書類に不備はなけれどわが店の農薬服みてひと一人死にき 西尾睦恵 年下の上司よくしゃべる男にて六月はやや上滑り…

武富士のポケットティッシュを詰め込んだ箱を残して母は逝きたり 池田弓子 牛乳パック三十個分を切り開き重ねくくりてはればれとせり 織田梨花 観覧車ひと回りして戻る場所ミナミは見下ろすかいのない街 大橋麻衣子 蝋燭の炎の揺らぐ絵を見たる一日は言葉少…

自転車を毎日こいで主婦われはこのまま空を飛ぶかもしれず 早川志織 飛ぶときも人の身丈の域を出ぬオホゴマダラの領すくさむら 渡英子 せいよくの淡くなりゆき、せいしゆんのただなかなりし歌読みかへす 宇田川寛之 おおいなる口現れて食われいるわたしの骨…

大陸で拵(こさ)へしビニール傘越しに白雨にかうべ垂るるひと見ゆ しののめに富士の山みる狂者守(きやうじやもり)『赤光』初版に居るは恋ほしも ユリ・ゲラーにひよいと曲げられたる銀のスプーンのごとく人を殺むな 高齢化少子化の世を天照らす女帝候補が…

【扇マーク】(コーチとやりとり) 1000万画素のデジタルカメラから複眼の蚊の羽音もれくる

狂ひたる壁掛け時計はいつみても全き自由のなかに動ける 梶崎恭子 エレベーターのボタンを押せばつかの間を爪のひとつにくれなゐ点る 辻田洋美 服脱ぎてそのまま置けばそのままにくにゃりと拉げわが過去になる 菊地威郎 振り返ることはもうよし雨衝きて生き…

白皿の煮物に散らす空豆を仕合せの欠片と今思いたり 山田幸江 東北の男はむかしのにほひして父のごとくにふるまひたがる 花鳥佰 陽炎のごとき喪服の親族の一人となりて陽炎に入る 吉川真実 てつせんの垣根の前にわが犬は名を問はれをり美しき敬語に 大越泉 …

煩悩をながく吐ききし右よりの旋毛のあたり髪うすれたり 染宮千鶴子 ロダン彫る「考える人」凛々しかり吾細ぼそと「考える葦」 杉山みよ子 夜の橋にひとり立ち止まり眠らない水の流れをふと怖れけり 守谷茂泰 褐色のナチ党制服映しつつうぬぼれ孔雀のごとき…