2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

かはいいは汚いになる年頃の口の周りのごはん一粒 本多稜 三月の池の濁りに浮きて沈み鯉魚ことごとく人面魚なり 酒井佑子 鵯が騒がしいのとかかはりはなけれども詰将棋が解けぬ 長谷川莞爾 爆竹と靴みがきと唾吐きの漢民族とわれはおもへり 山寺修象 「未修…

とりあえずゴミ捨てにゆくゴミ袋ふたつ分ほど軽くなるため 柏谷市子 さういへば介護の介の字ふわつと突然降りて来る字のやうなり 中平敏子 尻尾高く揚げをるなり春なれば猫の肛門くれなゐを帯ぶ 矢野千恵子 八百余機の三輪ターレ荷を運ぶ働き蜂の巣うつりの…

九時間も寝てしまひたり目蓋に春の女神のゐさらひ乗りて 川井玲子 救いもせず救われもせず着ぶくれて籠れる日々をミモザ咲き満つ 佐山みはる 壁にゐる子蜘蛛の手足数ふれば可細きながら八本有りぬ 坂口光 そっとリボンを解(ほど)きてやれば幼子がほーっと…

いっぱいのわたしを乗せて地下鉄はわれらにならぬ個体を運ぶ 石川普子 包装紙破るやうには捨てられぬ赤き口ひらくこの友達を 佐藤あきら子 誰も居ない墓地に参れば父もいない母もいないと雀がさわぐ 遊亀涼 死をコピペしたかのように墓石は陽の射す丘に正し…

結社誌にジョン・ケージの沈黙の楽音として欠詠はあり ぬばたまの皮蛋(ピータン)あかねさすアヒル摩尼車(マニぐるま)のごと円卓まはす 広辞苑に「毒婦」と「独夫」ならびゐて男さみしく殺されてゆく あんぱんの中の漉し餡のなめらかさもて腰パンはずり下…