2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

鏡中にゐて美容院のながき時間いづこか遠き壁夕焼けす 酒井佑子 あたためたミルクのようなあやうさだ誰かひとりを愛するなんて 鶴田伊津 「自治会を退会します」一枚の紙差し出して去りし人あり 林悠子 新しき眼(まなこ)に写る妻の顔くっきり見えて面白く…

そこにいよと花が言いますわたしからすぐにも離れたがるわたしに 谷村はるか 返された笑顔は理解することを投げだす合図わたしもわらう 猪幸絵 てのひらに乳液馴染ませつつみこむもうねむそうな母の両頬 平林文枝 ふる雪の勢(きほ)ひしづかに増しくればリ…

袋から出てる頭を引つぱつてしつぽから食べるたい焼きが好き 勺禰子 神様がゐやうとゐまいと私(わたくし)は真白(しろ)き便器がとつても好きだ 黒田英雄 山形弁愉しむやうな茂吉ゐて「随行記」読めば心なごみ来 荘司竹彦 あらがはぬことのすがしさ裏表あ…

あたたかい牛乳のにおいやさしい、とだんだんわかるようなひとがいる 梶原治美 通るたび両手に抱きし大銀杏いまぞ知りたる抱かれしはわれと 岩崎堯子 去りてゆく父の姿に似ていたり毛筆で書く海という字は 有朋さやか 展望台に君と並びてかぶりつく山賊むす…

DIES IRAE (4) 伊波虎英 根の国を灯してゐたり今宵よむ歌集の考(ちち)のうた妣(はは)のうた いちにいさんしいごおろくなな着膨れて着膨れできぬ死後を恐るる 暴君竜レクスのにぶき歯ぎしりの響動(とよ)む月下をおもへば哀し ぬばたまの闇に…