2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「おかあさん」と抱きついてきしをんなのこはしりさりたり未来のわがこ 高澤志帆 残酷がやさしきことばで語られる童話の背表紙なぞりておりぬ 鶴田伊津 かなしみをそうは呼ばずに抱えいる少女の使う薄き鉛筆 岩下静香 夕ぐれを草刈る人は帰りゆき夏草のなき…

――死す。として終わった伝記あっさりと死は訪れる他人のうえに 猪幸絵 峠には峠の風ありのぼりつめ振り向きしとき帽子とばさる 立花みずき 横顔を誰もが二つ持ちながらつかいどころは凌霄花(のうぜんかずら) 梶田ひな子 薬玉のわれたる後の雅子妃はややや…

医師の言ふ出産予定日季節三つ越えたる先のやさしき数字 河村奈美江 突如、文語に口調かわりて呪を放つライトノベルのなかの魔導士 砺波湊 どしゃ降りにひたむきに漕ぐ自転車を置き去りにして行ってしまおうか 今野智恵 死ぬまでは生きるわれなり手のひらに…

僕わたし小生自分俺吾が輩みども拙者の人生模様 岩崎堯子 万引きしたる鍋でアルミの実験をした少年町の開業医となる 山本照子 登山口に戻り来たれる老夫婦 山に対ひて深き礼する 黒河内美知子 幼日の面をつけたる我のごと童歌出づ間違いもなく 北村鈴枝 テー…

◆ うたを読む 伊波虎英 「短歌人」に寄せられた歌には、毎月すべて目を通すようにして いる。会員2、1、同人2、1という順に読みながら、いいなと思っ た歌には赤ペンで○をつけてゆく。辞書を引いてもわからない言葉 で気になるものにも、後で調べること…

岡山の桃十二玉ひとつだに桃太郎生(あ)るることなく届く ボルト追ふスロー映像にかほの肉ゆるるタイソン・ゲイ凄まじき 佐佐木信綱(のぶつな)に北原白秋(はくしう)敗る 甲子園に母校のうたは二度ながれざり 処暑すぎて無性にブルース・スプリングステ…