2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

きのふ飛込自殺ありけり西永福5号踏切春の大底 酒井佑子 触感のちがふつめたさ白秋の詩碑と歌碑とに触れて来たれば 渡英子 誰にさえ人を殺めし祖がありき山は広がる扇のごとく 八木博信 自我のごと開き廻れり学童の傘つぎつぎと開かれてゆく 水谷澄子 銃刀…

妻も吾も健やかにして日常は忘却多し不都合あらず 関根忠幹 いちじくの木に芥川龍之介棲みついて葉越しに蒼き首筋の見ゆ 花鳥佰 すり切りし升にひと盛りおまけのせ砂糖売りしよ父の大き手 野村千惠子 変身ベルト腰に巻き付けへんしんに手間取る四歳を吾は立…

炭酸のぬけたるコーラひそと飲む標本室のやうなる食堂 関口博美 白熊の子供らが入水ためらへば親熊背なより鼻で押しやる 坂口光 六人が口をそろへて一人(いちにん)をいい人と言ふ一人(いちにん)軽し 森脇せい子 (2009.9.9.記)

教会の塔の高処に吊る鐘のぐらなだぐらなだ天に鳴る街 吉岡馨 汚さずにきたるその手でふれてみよ白いタイヤキ白い仏壇 芦田一子 よろめきてもなほ一発のジャブのため内藤大助にやりと笑ふ 平柳ミツ子 五月病わずらう犬が庭中にほりたる穴の一つに落ちる 田平…

神経質(ナーヴァス)に手を洗ふがにやや強き風に新樹はゆれやまざりき マスクせし女神ネメシス満員の車輌に愛(は)しき咳ひとつしぬ 念入りにうがひをしたり上を向くかほ大山椒魚(はんざき)の貌となるまで ぎちぎちに文字の詰まれるこそ良けれ太宰治の新…