2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

◆「歌も夏枯れ」大森益雄 ひぐらしの百の絶唱その中にわれの弱音も一つまじれり 見舞ふたび母世に在るを実感す笑みて言ひ合ふ早口ことば <23区全図>の折り目に穴あけば靖国神社の<国>破れたり 十一面観音十一それぞれのやはらかき闇におもてを向けよ ◆…

自転車に乗りたるままの姿にて死にし人あり寓意なるべし 藤原龍一郎 夏の夜空に寂しき狐がゐるといふその長き尾を白く流して 西崎みどり 猛暑日は熱帯夜へと移りつつどつちが棄てたかわからぬ親と子 松村洋子 高き位置にとどまる肉のかたまりとして八月のキ…

大変ですねと言はるることの多くなり<たいへん>を生くることの平凡 八木明子 大丈夫って文字が見えた おばあさんの手の甲の皺を見つめていたら 魚住めぐむ 青い空港(みなと)だ工場(こうば)だサイレンだと歌われし校歌の学校が消ゆ 竹脇敬一郎 小鳥らの…

巨(おほ)き牛ぶつかりあへば場内に熟れたる果実の匂ひただよふ 関口博美 血の匂ひのこして黒き牛去ればにんげんの罪しばしかがよふ 関口博美 サングラスはづして御仏をろがみぬ 総身漆黒御眼一筋 川井怜子 蝉のこゑ聞きいれば蝉のこゑばかり恒河沙阿僧祇那…

換気扇まわせば聞こゆ 北へ行き北よりかえる夜汽車の汽笛 有朋さやか ポケットのなかより出でし貝殻は我が掌にもろくくずれる 太田賢士朗 どしゃ降りはきみを眠らせこの部屋を小舟のように頼りなくする 黒崎聡美 「撮り鉄」が雀の如く一列に並びし畦は雨にぬ…

◆ モナリザの瞳 伊波虎英 オールスター戦明け、阪神が巨人に変わって首位に立ち、ペナ ントレースがますますおもしろくなってきた。このまま最後まで 首位でいられるかは期待半分不安半分の半信半疑。長年、阪神フ ァンをやっていると、阪神の選手がプレーし…

牛乳でグラスをよごす八月の朝かなしみのひとつ兆せり 好きだつた夏も嫌ひになつてゆく さう老いるとはさういふことだ 砂浜に漂着したる流木に幽霊高齢者のゆくへ訊く デイサービスの福祉車両に八時間置き去りにされ死にし老い人 自販機にしみいる蟬のこゑな…