2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

◆「夜の窓、朝の窓」内山昌太 のびやかな影を曳きつつ老い人は午後の陽射しに出逢いつづけぬ テーブルの脚のくらがりひそかなる沼ありてひたす日々の足裏を 陽光はまずしき窓に打ちあたり展かるる目のなかの教会 夜(よる)の窓にすきとおる胸を沿線のしろき…

閏日の黒岩沢に日はおよび角まだ若き鹿がたたずむ 庭野摩里 子の背丈標せし柱のある家に雨ふりおらんしずかな雨が 村山千栄子 キルケゴールの語源を問えば教会の庭なり即ち墓地の謂なり 宮田長洋 きさらぎは戊寅(つちのえとら)の日のひかり犬と人とが乳を…

生き物はなべて嫌ひといふ母のいかにかいます春の明け暮れ 平居久仁子 帰宅せし解放感に脱ぎ散らす服しみじみとふるさとぎらい 古本史子 封筒を湯気にかざして開きたる女がありき古き映画に 若尾美智子 老いびとら秘密指令に従ふごとリュック背負ひて無人駅…

敗者ではなく被害者の顔になる福原愛は試合に負けると 西尾睦恵 如月の人体模型の骨盤の蝶にあふるる性欲のあり 安斎未紀 わが両手ふいに払ひて息たえぬ癌病む夫は吹雪く夕べに 菊池尚子 ぶらんこを高く漕ぐとき子が不意にこの世の外にゆく心地せり 菅八重子…

オリーブの葉裏の白さ思はせて屈伸の膝ポキポキ鳴りぬ 篠塚涼 加湿器の湯気のながれてわが生の秒針震ふ如月の夜 谷垣恵美子 温もれば舌やわらかになる君に夜はしらしら髭けぶりきぬ 佐山みはる 若草の色の雪かきスコップが四角四角に雪を切りゆく 吉岡馨 オ…

ちちははの私邑秘奥に咲く花を知るゆゑわれはうまれ来りき みどり児の私邑秘奥の景にふる骨のちちはは、雪のごとしも わたくしの私邑秘奥に咲く花を知るまなざしで仔猫よぎりぬ じやりじやりと黄砂が混じる中国製冷凍餃子を食む風邪心地 10杯のグラスの水と…