2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

感情はふたひらみひら降り沈む或る日はもみぢ或る日は雪と 春畑茜 現在地 おまへはここにゐるといふ案内板ありわが目の前に 松村洋子 耳はまだきこえてゐると葬儀屋に促されつつ死者に礼いふ 寺島弘子 ゴッホはメニエル病であった、という説もある。 おもは…

露出計すこし狂って白すぎる陽射しの中にシャツの胸ある 谷村はるか 拾い来し紅葉が机上で反り返る秋から冬への舟の形に 東海林文子 なにがなし気後れのしてとほくより師に憧(あく)がるるをよろこびとせり 原みち子 新仮名で吉川宏志が歌を書くことに気づ…

ときわ木も冬の色めくわが庭にひそかに佇たすヴィトゲンシュタイン 久保寛容 正論でこの世を生きてゆけるなら 夕餉のキムチ鍋の混沌 近藤かすみ 垂乳男といふことばこそかなしけれあばら骨うく老いたるアダム 松野欣幸 お守りの如く持ちゐる末の息子(こ)の…

魔法のごと夫の獲りくる大根にみじんも泥が付いてはおらぬ 高木律子 つきつめて言へば私も産む身体灯ともる鳥屋(とや)に鶏(とり)は眠りき 田宮ちづ子 骨と骨ぶつけるやうに畳まれて不特定多数のスチール倚子よ 篠塚涼 眠たげにぐずり泣く子をおもわせる…

影踏みの影がない、ない またひとり少女が居なくなる夕間暮れ 道々に防犯灯を殖やしつつ降誕祭をわれらは待てり 月夜霊(つくよみ)の涙にふやけ波打てる週刊写真誌表紙の女 おほくちの真神(まかみ)獣舎をひたぶるに回(めぐ)る安息日朝十時 噴水は水霧(…