2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ぽうと呼ぶにぽうと応へてふくろふの不可思議の目をみひらきにけり 酒井佑子 飛行機をはこぶ飛行機があると聞くその巨大なる飛行機見たし 関谷啓子 団栗は手のひらの上しっとりと子の手の温み伝えてきたり 鶴田伊津 優しげなカーブの蛇口に水はしり言葉まず…

現れる度に倒してきた壁はわたしの姿で腐り始める 大橋麻衣子 懐中電灯持ちて夫のあと追へば殺す気かとわが手をつかむ 三木伊津子 軽やかに鈴を鳴らして来る猫のその鈴の音に秋は来にけり 小田倉良枝 観潮楼の間取りが頭に入っている吾は鷗外の家庭オタクぞ …

睡眠の少なき我をふうわりと空に浮かべる木犀の香よ 吉川真実 押し返されて一段下がる。階段も前進する気がないと上れぬ 生野檀 石ころを蹴りつつ歩むという遊び半世紀あまりしておらずなり 川口かよ子 秋真昼足にからまるわが影を蹴とばしながら歩いてゆけ…

青果店の匂いが風にのりてくる朝日のなかの会話うつくし 鰐田茂雄 単純な影持つ吾なり日盛りの下りホームに電車を待てば 佐山みはる 付箋紙の糊のにおいのかなしさよかなしみにひたりたくて嗅いでる 今井ゆきこ 川(メ・ナーム)を行き交ふ船を統べて吹く少…

をさなきがポーニョポーニョポニョと唱ふるは朝な夕なの呪禁(じゆごん)なるべし 樹にビルに人に影添ふ陽のもとにおのおのの影、葬穴となる 脱線せし貨物列車がふるごときゲリラ豪雨来(く)帝都の谷に ゲリラ豪雨を (トレインレイン)> と呼ぶわれの頭上…