2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

晩年に母がつくりし万華鏡一生尽くしてめくるめくなり 杉山春代 栗色のストラディバリウスぬばたまの黒髪かがやく諏訪内晶子 蒔田さくら子 ややに陽は傾きはじめ入り来る電車はこの街の影を連ねる 平野久美子 少年の耳は柴犬の耳に似て夕日の中で時おり光る …

落葉踏む音も楽しき冬となりまづは足より幸せは来る 田中浩 ふうわりと落ちて来たのをぽんとつく紙風船が遠い日へ飛ぶ 森谷彰 太い指で傷にくすりを塗りつけてくれるみたいな電話だ、泣いた 谷村はるか 飴色のメタセコイアに陽は沈み今日を折りたたむ時が来…

五指と五指組みたる時に円ができ血流めぐる心地のすなり 佐々木和彦 廃人となるはた易く狂人となるはつくづく難しと言はむ 内藤健治 日本語のわからぬ人が売っているしめ縄買って今年を終えむ 森直幹 あさゆふに月のひかりを吸ひこみて高層ビルの屋上(うへ…

台船が冬の日差しを載せてゆく川下に棲む暗き者らよ 田宮ちづ子 いまの吾に大好きがない大好きを忘れしままにうすくほほえむ 竹市さだこ ふとみれば十三台のレジの人ことごとく簡易マスクつけゐる 野上佳図子 まじまじとパブロ・ピカソの顔見ればパブロ・ピ…

戯(じや)れあへる子猿のやうにもみぢばは一葉二葉と零(こぼ)れてやまず 白鳥のごとき司書ゐる図書館に冬の湖畔の冷えみなぎれり 静寂主義者(キエティスト)の祈りのごとく星彩は冬青空にきらめきてゐむ ゲイルズバーグの春を愛す、とのみ記す賀状をだし…