復活祭の月光浴びてあるく吾はサドルを盗られたる自転車か


春霞淡くさへぎる遠方(をちかた)へ老女三人(みたり)をバスは運べり


さかさまに鞄をふればしろがねのゼムクリップ出づ泣けとばかりに


しやきしやきとサラダすなはち北原白秋(はくしう)のさびしみを食む四月昼なか


磔さるる運命(さだめ)の背(せな)にくちびるをひそと押しあて泣く女はも


陸橋に吸はるる雨や、春の雨 しづかにわれも消えてゆきたし  伊波虎英