R300のカーヴをなぞりつつ試運転車の厳かにゆく


梅雨の入りまぢかき空ゆ額(ぬか)を射る光 短歌よさもあらばあれ  
                              (塚本邦雄氏昇天)


石走(いはばし)るあふみを思(も)へば戦ぎたつ城築かるるまへのさみどり


猜疑心を洗濯ばさみに銜へさせ乾梅雨空にはためかせたし


両耳をふさげば美術館(ミュゼ)の二次元の糸杉は吾の、世界のうねり


「短歌人」に載らぬ九首と載る六首玉斧(ぎよくふ)を乞はずわれは予想す  伊波虎英