開襟の体操服にかそけくもむなちゆれつつ少女にありき  弘井文子



栗木京子の目鼻誰かに似てゐたりすなはち鳥毛立女が浮かぶ  野上佳図子



突然の上司の死により落着となりたる一つにセクハラもあり  小野さよ子



わが髪にちひさき木枯らし宿りゐて髪梳くたびにせつなき音立つ  関口博美



定期券を初めて買つた春の日に国鉄「クモハ」もする民営化  勺禰子



ふと君の耳のかたちを思うかな卓に置かれし眼鏡のつるに  佐山みはる



カトマンズ帰りの吾が子は嘆きたり若者が自殺に来るのだと言ひ  長谷川知哲