帳尻合わせの人生の息子よ息子よと甘ったれる人がいる  篠塚京子



何事かわからぬ音が鳴り響きなにごともわからぬままに過ぎる日  渡口航



秋天に午後の時間は吸はれゆき草に止まりし蝶も動かず  高橋愛子



孫や子に命を託してゆけること百の短歌に優るとおもふ  河上征代



深層水のアロマミストでつつみたし午前零時の気がかりひとつ  芦田一子



つくだ煮の工場ゆ人ら出でてきてまとふかをりと共に散りゆく  脇山千代子



朗らかな声なりバスの運転手たつたひとりの乗客われに  柘植周子



雌鹿の瞳のやうな葡萄の実濡れたるままに皿にしづもる  海野雪



イメージはきつと作られるのだらう勝間和代のどこがすごいの  さつき明紫