八本の吾が包丁はこののちのどのあたりにて捨てて去るべき  田中曄子



おもいでとよく似て蚊取り線香は消えるまぎわにひときわ香る  砺波湊



とりどりの花咲く庭に老妻は正座をなして草を引きゐる  五十嵐敏夫



あの方も逝かれたなどと思いつつ牛乳の膜つまんで捨てる  岡頌子



東京にスカイツリーの育つ夏 ゴーヤの蔓も日日に伸びゆく  洲淵智子