ポケットに手を入るるときなかにあるモノをかならず握りてをりぬ 長谷川知哲
君が呉れた手袋すれば君にメール打てなくなりて淋しくなりぬ 勺禰子
駅前に並ぶタクシーが表示する「空」と云う字に雪ふりかかる 伊藤直子
空を飛びニューヨークからやって来る生後五か月の孫を待ちわぶ 木村悦子
何を守り生ききし我かいっしんにもやしのヒゲをとりているなり 菅原和江
「おはよう」と言いながらもう服を脱ぐそういう場所として更衣室 砺波湊
ドラム缶のやうなる気配かたはらに佇ずむ人の影をし疎む 柘植周子
十九度の設定温度のストーブにオマケをもらう二十度の部屋 高木律子
ぽってりと太ったネコを思い出すほどよくぬるいミルクティー飲む 天野慶