カメラ・メランコリア  伊波虎英


鬱鬱と梅雨の晴れ間をゆく我はレンズキャップの外れぬカメラ


ユニクロへステテコ買ひにゆく時も監視カメラに見張られてゐる


証明写真の機械のなかに入りたる人の脚だけ見て通り過ぐ


日常に潜む運命をやりすごす防犯カメラのダミーのやうに


セデスさへ砕きて呑める我なれば胃カメラなんぞ絶対呑まぬ


一匹の飼ひ猫だけを撮るカメラ果ては一基の墓となるべし


黒髪に心ときめくゆゑなるかボディーの黒きカメラに惹かる


靴先にカメラを仕込む中年の男の性(さが)をニュースは伝ふ