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昨年の「題詠マラソン2003」に出詠した100首のうち、
単行本『短歌、WWWを走る。』(五十嵐きよみ・荻原裕幸編 邑書林)
に収録されている自選20首です。
100首すべてをご覧になりたい方はこちらへどうぞ。
☆ 008:足りる 2003年02月01日 (土) 16時44分
たわむれに「足りているか」と訊いているイエスのようなティッシュ配りだ
☆ 010:浮く 2003年02月01日 (土) 20時46分
辻褄を合わせるために浮いている 午後九時半の温水プール
☆ 015:葉 2003年02月02日 (日) 11時57分
コンビニに欲しいものなし一枚の葉書を買って月に翳しき
☆ 016:紅 2003年02月02日 (日) 13時02分
紅玉(こうぎょく)のごときJAPANの満月を見たのだろうかルビー・モレノも
☆ 021:窓 2003年02月02日 (日) 17時51分
<シッダールタとは、「目的を成し遂げた者」という意味である。>
いつまでも閉じられぬ窓ひとつずつ持って僕らは生きているんだ
☆ 024:きらきら 2003年02月02日 (日) 22時20分
<キリストとは、
「油を注がれた者(メシア)」という意味である。>
永遠にオリーブ・オイルを浴びせられきらきらきらと溺れる男
☆ 036:遺伝 2003年02月06日 (木) 11時44分
夕立に傘は不要だ、向日葵になるまで洗い流せ遺伝子!
☆ 046:南 2003年02月07日 (金) 21時36分
「北側」とテレビ・キャスターが言うたびに幻肢のごとく <南> は疼く
☆ 047:沿う 2003年02月07日 (金) 21時43分
白線に沿って歩いた国道の、もう後ろにはあなたはいない
☆ 050:南瓜 2003年02月08日 (土) 14時39分
かぼちゃ畑の南瓜いっせいにひび割れて世界は夕焼けに染まりゆく
☆ 055:置く 2003年02月09日 (日) 17時02分
テーブルに腕時計置き臓器提供者(ドナー)とはこういうものかとふと思いたり
☆ 064:ド−ナツ 2003年03月06日 (木) 14時09分
アンドーナツハアナガナイカラキライキライ
アメリカハ◎◎◎カラ◎◎◎◎
☆ 070:玄関 2003年03月10日 (月) 17時28分
玄関の灯油タンクのみずいろが闇に浮かんで地球のようだ
☆ 071:待つ 2003年03月10日 (月) 17時29分
アップルパイ焼きあがるのを待ちながら寂しくおもう冬の引力
☆ 075:痒い 2003年03月14日 (金) 00時19分
痒いのは目でも鼻でも頭でもなくてひこうき雲のところだ
☆ 078:殺 2003年03月16日 (日) 00時36分
ドトールの地下で珈琲啜りつつ <殺> の字多き歌集を読めり
☆ 084:円 2003年03月22日 (土) 14時47分
円く円く地球を包みとぶ鳥のすべてを母と呼びたき朝(あした)
☆ 088:象 2003年03月22日 (土) 15時20分
☆ 096:石鹸 2003年03月25日 (火) 16時31分
四月、きみは泡立ちすぎる石鹸に夜毎さくらを零らせていたり
☆ 100:短歌 2003年03月25日 (火) 16時52分
<人間は無力か? 言葉は無力か?>
器から器へうつす夢うつつ言霊信じ短歌を抱けり